目次
一 能・狂言を「読む」ということ
連続大河ドラマに『平家物語』
能・狂言を読むということ
二 戦物語と能
王権と戦、そして芸能
能と平家琵琶
能が行われた社会
琵琶法師と三つの戦物語
三 「平家」物の能を読む
本書の構成
凡 例
1〈朝長〉あらありがたの懺法やな
背景 物語が語る源平両氏の歴史
源氏と宿場
物語としての能の機能
源氏の墓参
朝長の死
観音懺法
源氏将軍頼朝
青墓という土地
2〈俊寛〉船影も人影も消えて見えずなりにけり
背景 後白河法皇とその側近
俊寛という男
掛詞
地謡の語り
能の面
3〈頼政〉よしなき御謀叛を勧め申し
背景 源頼政の決起
保元の乱から平治の乱へ
「よしなき」謀叛
芝の民俗
4〈鵺〉盲亀の浮木、闇中の埋木
背景 頼政と鵺
頼政の三位昇進
頼政の謀叛
東三条殿
鵺と崇徳
世阿弥と鵺
中世の芸能者
5〈実盛〉実盛が名を洩らし給ふなよ
背景 実盛と義仲
能とモチーフ、原点
アイ狂言と『源平盛衰記』
実盛の霊の原点
現地に実盛幽霊の巷説、その背景
山本東次郎本のアイ狂言
6〈清経〉本の社に手向け返して
背景 清経という平家公達
『平家物語』諸本と平家大宰府落ちの順路
柳浦の史跡
能の「大宰府落ち」
原点としての現地
清経落人伝説
7〈忠度〉花や今宵の主ならまし
背景 忠度という公達
源平合戦と光源氏
8〈敦盛〉同じ蓮の蓮生法師
背景 平家公達、敦盛という人
能と現地
異色の修羅能
9〈知章〉討たせじと知章駈け塞がつて
背景 知章という公達
父子の物語
能を読み替える『源平盛衰記』と平家史跡
神戸の史跡
10〈船弁慶〉あら珍しや、いかに義経
11〈通盛〉通盛夫婦、お経に引かれて
背景 通盛と小宰相の供養碑
通盛という公達
能と『源平盛衰記』
12〈千手〉重衡の有様目もあてられぬ気色かな
背景 重衡という公達
修羅能〈重衡〉と鬘能〈千手〉
頼朝が見参する重衡
戦と女人
『伊勢物語』の影
宿場と源氏
堕地獄を自覚する重衡
物語と女人
重衡と宗盛
13〈藤戸〉思へば三途の瀬踏なり
背景 『平家物語』と人民
戦と人民
屋島の平家
本説『平家物語』藤戸の戦語り
平家琵琶の物語と能
読み本の戦物語
佐々木氏と馬
『平家物語』諸本の語り
能〈藤戸〉の本説
母と子
恨みを残す現場
物語的状況
王権のための盛儀
人民と歴史
14〈屋島(八島)〉瞋恚に引かるる妄執にて
背景 屋島の戦物語
河内源氏の武将と能
義経と頼朝
平家と改元
義経の瞋恚
兼房という人
義経と梶原景時
建礼門院が語る義経
15〈大原御幸〉山里はものの淋しき事こそあれ
背景 『平家物語』の建礼門院
建礼門院と琵琶法師の語り
四 間狂言の世界
1〈屋島〉の間狂言
2「那須与一語」の自立
3〈忠則〉(忠度)の間狂言
4〈敦盛〉の間狂言
5 むすび、間狂言の笑い
五 「平家」物狂言について
はじめに
狂言を構成するもの
狂言の分類
狂言の構造
1〈柑子〉の行方
「平家」を語る座頭
陰の存在
こうじ
2〈丼礑(どぶかっちり)〉の川渡り
座頭を嬲る
当道座の盲人と狂言
3「やけ地蔵め」の〈川上〉地蔵
諸テクストの演出
愛知県立大学蔵『和泉流秘書』
狂言記
4〈瞽女座頭〉と座の式目
あらすじ
清水寺の西門
座の規定
座頭の世界
天正本〈ごぜざとう〉
5〈釣狐〉に「平家」の影
あらすじ
構成
「抜書」ということ
後書き
能・狂言曲名索引
内容説明
平家物語を本説(素材・出典)とする能十五曲、狂言五曲を注解(著者の云う〔読み〕)した書。本書はそれぞれの曲ごとに、先ずその曲の内容を理解するために〔背景〕を述べた上で、活字化されたテクストに従って段落を区切り、ストーリを示しながら〔読み〕(注釈)を行う。参考事項は〔補説〕に記す。平家物語研究の第一人者が蘊蓄を傾けた指摘は、多くの示唆に富む。
【本書の特徴】
〇能を視覚的にも理解するために、役者の動きを小書きで示し、曲に用いられる「面」の写真を掲載した。
〇著者は複式能の間に演じられる「間(アイ)狂言」に重きを置き、「間狂言は能をぶっつぶす」と云う。間狂言を通して、芸能全般に通じる本質的な笑いの機能を考察する。
〇その「ぶっつぶす」ことを著者は「虚(こ)仮(け)」と表現する。この用語「虚仮」が本書のキーワードである。
〇全国各地に散在する平家史跡は、能が典拠であることを指摘。