目次
序 章
第一章 『太平廣記』の體例
『太平廣記』の性格
『太平廣記』における記事と収録規準
『太平廣記』の各條文につけられた題
第二章 『太平廣記』成立後の出版經緯
異論の提出――『玉海』太平廣記條に見る王應麟の自注から――
『廣記』成立後の受容状況
空白期間が生じた要因――天聖の詔を手がかりに――
『太平廣記』編纂の目的
天聖三年以降における『初學記』・『白氏六帖』・『四庫韻對』の受容状況
『太平廣記』はいつ頃から再び世に行われ始めたのか
中央政府の動き
第三章 變容する『太平廣記』の受容形態――「類書」から「讀み物」へ――
北宋末期から南宋初期における『太平廣記』の受容形態
南宋中後期における『廣記』の受容――人的つながりの中で――
第四章 南宋兩浙地域における『太平廣記』の普及
南宋期における刋刻事業を行っていた地域と『廣記』流傳の關係(刋刻事業を行っていた地域
・文人の私刻)
『廣記』の印刷・刋行における轉運司關與の可能性
『廣記』受容擴大の契機
第五章 海を渡る『太平廣記』――『太平廣記詳節』をめぐって――
『太平廣記詳節』について
『太平廣記詳節』の構成
『太平廣記詳節』中に見られる『廣記』の佚文
『太平廣記詳節』の底本は『廣記』宋本の北宋本か
本書がこれまでに提示した見解の妥當性の檢證
終 章
おわりに/初出一覧/索引
内容説明
【序章より】(抜粋)
本書は、五章から構成される。第一章では、『廣記』がどのような性格の書物であったのか、その構成について概観する。第二章では、『廣記』成立後に提出されたという異論について、その異論が提出された背景・時期について考察する。そして、その過程で明らかになった『廣記』編纂の目的について提示する。第三章では、南宋期に入ると『廣記』に言及した書物の增大することから、なぜ『廣記』が急速に受容されるに至ったか、その要因を當時の士大夫社會の風潮から考察する。第四章では、第三章に續けて『廣記』受容の擴大要因を考察するが、『廣記』に言及した書物がどの地域で印刷・出版されていたかという側面から、より直接的な要因を明らかにしていく。第五章では、域外(中國以外の漢字文化圏)の資料を用いて、四章までに得られた檢證結果の妥當性を問う。妥當性を檢討するにあたり、ここでは、朝鮮王朝期に刋行された『太平廣記詳節』をとりあげる。この書物がどういった性格のものなのか、その構成や『廣記』佚文について考察したのち、その考察結果は、四章までに提示してきた結論に符合するのかという視點から檢討を加えていく。これらの檢證を通して、『廣記』がどのような過程で受容されていくのか、中國文學史の中に『廣記』を位置づけることにより、小説研究の一助としたい。