目次
序 (松浦 章)
自 序
第一篇 宋代における貿易制度――市舶の組織――
第一章 北宋末の市舶制度――宰相・蔡京をめぐって――
一、宋代初期の市舶
二、元豊三年の市舶
三、崇寧以降の市舶
表1、開宝四年~元豊三年市舶修定までの市舶人名及び職官
表2、歳入額と市舶収益額
表3、北宋末、市舶変動と蔡京政権得失
表4、宋代市舶司(広州、両浙、福建)の設置及び廃止一覧
第二章 提挙市舶の職官
一、『慶元条法事類』にみえる職官
二、提挙市舶の職官
三、提挙市舶任命の前後の職官
表1、官品がわかる提挙市舶
表2、提挙市舶就任の前、後の職官
表3、提挙市舶満任後に転運使に就任した人
表4、提挙市舶満任後、常平茶塩に就任した人
表5、「提挙市舶」が成立する前の兼任の職官について
第二篇 宋代における南海貿易
第一章 宋代の南海交易品
第一節 宋代の南海交易品・輸入品について
――紹興三年と紹興十一年の起発と変売――
一、北宋時代の舶貨――輸入品と輸出品――
二、南宋時代の舶貨・輸入品
表1、宋代南海交易品の年代別、起発と変売
表2、宋代南海交易品の分析――起発と変売――(『宋会要』職官四四市舶)
表3、宋代南海交易品の説明
第二節 舶貨の内容別分類
A 植 物
B 動 物
C 鉱 物
第三節 乳香考(一)――『中書備対』の記述について――
一、広州の乳香
二、三司が出売した乳香
表1、乳香の種類、等級、名称など、『中書備対』『諸蕃志』『宋会要』に見える対照表
表2、三司の出売金額(894719貫305文)と部署への内訳
第四節 乳香考(二)――『慶元条法事類』と乳香の用途――
一、乳香取得のための招致政策
二、中国に入った乳香の数量と政府の使用方法
三、『慶元条法事類』巻第二十八 乳香
四、乳香はどのように使われたか
五、イブン・シーナー『医学典範』二巻 乳香
第二章 宋代の泉州の貿易
第一節 『永楽大典』にみえる陳偁と泉州市舶司設置
一、『永楽大典』所収の陳偁の記載について
二、陳偁の経歴
三、知泉州陳偁
四、市舶法と市舶官制
五、市舶司設置請願
六、旧法政権と市舶司の設置
第二節 宋代の泉州貿易と宗室――趙士入を中心として――
一、趙士入の知宗在任期間
二、趙士入と貿易
三、宗室と官吏
四 士入、士衎の罷免
五、祈風と宗室
第三節 『諸蕃志』の著者・趙汝适の新出墓誌
一、墓誌の録文
二、祖先について
三、趙汝适の経歴
四、家族
第四節 南宋中期以降の泉州貿易
一、舶税の減少
二、泉州貿易の状況
三、知州の提挙市舶兼任――端平元年から景定三年まで――
四、宗室への銭米支給
表1、知泉州の提挙市舶兼任表(端平~景定三年)
表2、南外宗室への支給分担額 南外宗室の人数
第三章 占城(チャンパ)の朝貢
第一節 南宋期、最初の宮殿での占城(チャンパ)の朝貢
――泉州出発、都での儀礼、帰路につくまで――
一、『中興礼書』の「占城」の記述とその特色について
二、泉州に着いてから都に到着するまで
三、都での朝貢儀礼
四、占城の王たち この朝貢に関係ある占城王と周辺諸国との関係
付 『中興礼書』
表1、都での儀礼
表2、紹興二十五年占城の朝貢 日程
表3、朝貢の構成要員と人数
表4、進挙使の朝貢にかかる日数(泉州―都―泉州)(紹興二十五年八月~二十六年一月)
表5、宮中での朝貢儀礼の日程表(紹興二十五年十一月六日~十二月十日)
表6、紹興二十五年の進奉品と回賜(手当も含む)
表7、引伴者への手当
第二節 紹興二十五年の朝貢品と回賜
一、朝貢品回賜
二、回賜以外の礼物
三、朝見使と朝辞使に贈る品
四、朝貢要員への手当、その他の手当
五、占城国王に礼物と官位を賜る
表1、紹興二十五年占城の朝貢品
表2、紹興二十五年占城の朝貢品の回賜の資料一覧
表3、紹興二十五年占城のへの回賜
表4、朝貢品と回賜の価格試算
第三節 占城の南宋期乾道三年の朝貢をめぐって
――大食人烏師点の訴訟事件を中心として――
一、乾道三年の入貢
二、大食人烏師点の訴訟事件
三、その後の朝貢――淳熙元年と勅書
表1、乾道三年の占城の朝貢品
表2、交趾の一分収受
表3、占城の一分収受
表4、淳熙元年と紹興二十五年の回賜
第四節 南宋の朝貢と回賜―― 一分収受、九分抽買――
一、淳熙元年の勅書
二、乾道三年の朝貢
三、紹興二十五年の朝貢
四、交趾(安南)の朝貢品と回賜
五、榷 場
表1、淳熙元年と紹興二十五年の回賜
表2、淳熙元年の朝貢品の試算
表3、交趾の一分収受
第四章 南海貿易の発展と商人の活躍
第一節 南宋初期来航のアラブ人蒲亜里の活躍
一、蒲亜里の紹興元年の入貢(資料1)
二、蒲亜里、海賊に襲われる(資料2)
三、蒲亜里の結婚と帰国の勧告(資料3)
四、大食故臨国の使として入貢(資料4)
五、蒲亜里、不正を訴え、高官らは免職となる(資料5)
第二節 南海貿易の発展と商人たち
一、外国商人の活躍
二、中国人の活動
三、福建商人の社会的背景――漳州と寺院――
第五章 東洋文庫蔵手抄本『宋会要』食貨三十八市舶について
一、徐松と『宋会要』と市舶
二、藤田博士と『宋会要』食貨三十八市舶について
三、『宋会要輯稿補編』と『文庫本食貨市舶』との関係について
四、中国国家図書館での調査『宋会要』市舶と残簡
――「宋会要 葉渭清本」一四〇三――
五、『文庫本食貨市舶』と職官四四市舶と『補編』との関係
六、『文庫本食貨市舶』に記されていない記述
――『宋会要』職官四四市舶の淳熙年間以降について――
結びにかえて
宋会要輯稿 論文目録
附 『宋会要』食貨三十八市舶
表1、『宋会要』の市舶に関する資料六種
表2、徐松年譜と死後の『宋会要』
表3、『補編』市舶と文庫本食貨市舶との関係
表4、市舶の記述――『文庫本食貨市舶』(文庫本食貨市舶)『補編』『職官(四十四市舶)』
表5、『宋会要』職官四四市舶、淳熙元年・嘉定六年
あとがき
索 引
内容説明
【前言(斯波義信先生)より】(抜粋)
本書の全体を通じて〈市舶〉研究のための史料学、なかんずく本源史料に位置する『宋会要』の〈食貨門:市易、雑買務、榷易など〉、〈職官門:市舶、提挙市舶使など〉、〈蕃夷門:なかんずく歴代朝貢など〉などの各項目に分かれた史料の活用、という姿勢が終始その底流として流れていて、各個別論考でもそれは一貫している。なかでも特筆に値する考察としては、舶貨〈市舶輸入品〉の全容とその具体内容をめぐる精細な一連の研究がある。たとえば、本書第二篇〈宋代における南海貿易〉、第一章〈宋代の南海交易品〉では、主として『宋会要輯稿』市舶における四五〇種前後を記録した、詳細を極めた一一三三年、一一四一年の舶貨の記述を手掛かりとしながら、市舶司を通過した大量の舶来貨物が、まず官制上で区別する精粗の範疇(細色・粗色・粗重)によって個々の品目ごとに分類整理され、ついでそれぞれを範疇分けに按じつつ(a)中央政府への送達(起発)、(b)現地海港における商人への売却(変売)に付された状況が分析された上、末尾に舶貨の一点ごとに上記の範疇分類、および産地、内容説明の備考を付した一覧表が掲げられている。また本書の同じく第二篇第二~四節では、舶貨の内容分析をさらに深めて、香料薬物ことにその中の重点品目であり、数量的にも厖大に上った乳香の輸入とその用途につき、『宋会要』の関連史料を徹底的に博捜した作業のなかで、北宋の神宗のころの人、畢仲衍が残した貴重な財政史料である輯佚『中書備対』および南宋の法律史料である『慶元条法事類』からも未発見史料を捜集した上で詳細に論究している。これらは貴重な先端的な業績と評して差し支えない。こうした貢献は、土肥さんの研究の主眼である〈市舶制度の史料学〉の復原作業として重要であるだけでなく、「舶貨」に関わる官制の制度枠組み、その周辺に見え隠れする史実を理解する上でも貴重である。……土肥さんは東西交渉史ことに市舶研究に関心を懐き、研究の原点を桑原・藤田両氏の業績に置きつつ、市舶の制度枠組の史料学全体の確立に向けて、克明丹念な研究を発展させた。本書はなかんずく〈市舶〉問題の史料学、文献学の上での確実な貢献であると評価できる。
【序(松浦 章先生)より】(抜粋)
宋代中国の海外貿易史研究においてもっとも重要な研究問題は、“市舶司”組織の解明であり、日本では藤田豊八博士がその組織と運用等に関する問題解明に先鞭をつけられ、ついで桑原隲蔵博士が“蒲壽庚研究”において関連する問題を展開され、その後は研究の餘地が無いように見られていた。しかし本書の著者土肥祐子博士が永年にわたり詳細に検討され、新たな境地を開拓されたのである。本書『宋代南海貿易史の研究』は、宋代の海外貿易の発展として、宋代の市舶組織について論証され、とくに東洋文庫蔵の藤田博士の手抄本『宋会要』食貨三八、市舶に関して詳細な考証が行われ、ついで南海貿易に関する貿易品について具体的に南海交易品を『宋会要』市舶より四百数十種を抽出し、北宋から南宋にかけて貿易品が急増し、都におくる高級品である起発品と市舶司で売る変売品の問題、紹興十一年(一一四一)には変売品が九割を占めたことなど、また貿易港泉州や貿易対象国の一つであった占城国との関係史、アラブ人蒲亜里などの問題を新たな視点から深化された。本書の出版は、日本が世界に誇る宋代史研究に、新たな成果を加えられたと言えるとともに、多くの識者から支持されるものと信じるものである。
The Historical Study of Nanhai (南海) Trade in Song (宋) Dynasty