目次
嵆康「釈私論」における「理」と「志」…………………………………………………………… 大上正美
王弼再考――「亡」と「非存」―― ……………………………………………………………… 堀池信夫
漢魏における公府・幕府の発達 …………………………………………………………………… 石井 仁
『漢書』「五行志」における[董仲舒観]――「高廟園災対」を中心として―― …………… 小林春樹
曹操と楽府――「新声」「新詩」の語をめぐって―― …………………………………………… 牧角悦子
建安文質論考――阮瑀・応瑒の「文質論」とその周辺―― …………………………………… 和久 希
煢煢たる呉質 ………………………………………………………………………………………… 高橋康浩
『魏略』の撰者、魚豢の思想 ………………………………………………………………………… 柳川順子
「春秋左氏傳序」と「史」の宣揚 …………………………………………………………………… 渡邉義浩
あざわられた洛神――南朝陳・顧野王の「豔歌行」をめぐって―― ………………………… 大村和人
唐庚の『三国雑事』について ……………………………………………………………………… 矢田博士
『李卓吾先生批評三国志真本』について …………………………………………………………… 中川 諭
毛宗崗本『三国志演義』における劉備の仁 ……………………………………………………… 仙石知子
関帝の肖像について ……………………………………………………………………………… 伊藤晋太郎
清原宣賢の中国通俗小説受容――『蒙求聴塵』を題材として―― …………………………… 長尾直茂
狩野直禎先生 略年譜・著作目録/あとがき/執筆者紹介
内容説明
【あとがきより】(抜粋)
三国志学会会長狩野直禎先生は、本年一一月八日にめでたく満八八歳をお迎えになられる。その米寿を記念して、先生の人と学問にそれぞれの形で関わりを持ち、大きな刺激を受けてきた後学の者たちが、三国志に関わる論考を執筆して成ったのが本書である。
三国志学会は、二〇〇六年七月三〇日に設立され、本年で一〇周年を迎える。この間、狩野直禎先生は、会長として本会を牽引され、三国志の研究・普及に尽力された。大会にお見えになると、一番前の席に座られ、報告者の話に聞き入られる。うかがったところによると、先生の師である吉川幸次郎先生に習われているのであるという。学会の会長が先頭に立って、熱心に耳を傾けてくださる学会は、多くはない。……三国志学会は、東洋史・中国文学・中国哲学といった枠を破るだけではなく、研究者に止まらず広く社会に開かれた学会である。会員もいつしか五〇〇名に近くなった。それには、先生の温厚な包容力のあるお人柄が、最大の力となっている。
中国との政治的な関係が難しくなり、日本人の対中国感情が悪化する中、両国が分かり合う架け橋としての三国志の役割は大きい。三国志を研究・普及していくことの前途は、けっして容易ではない。しかし、それを推進していくことが、われわれ後進の責務であろう。先生には、いつまでもわれわれ後進の指導にあたっていただくことをお願いしたい。ますますのご活躍を祈る次第である。