ホーム > 汲古叢書137 北伐と西征

汲古叢書137 北伐と西征

―太平天国前期史研究―

汲古叢書137 北伐と西征

前著『金田から南京へ』に続くさらなる太平天国の解明なる!

著者 菊池 秀明
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 近現代
シリーズ 汲古叢書
出版年月日 2017/02/22
ISBN 9784762960369
判型・ページ数 A5・608ページ
定価 13,200円(本体12,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

序 章
  一、前著『金田から南京へ』の内容と課題について
  二、本書をめぐる課題と近年の研究成果
  三、本書をめぐる先行研究と構成について


第一部 太平天国北伐史

 第一章 北伐の開始と懐慶攻撃
  一、北上作戦の開始とその戦略
      北伐軍の規模とその編制
      北伐軍の戦略と清朝の対応
  二、懐慶攻防戦にみる太平天国
      黄河渡河作戦と懐慶攻撃の開始
      懐慶包囲戦に見る太平軍と清軍

 第二章 北伐軍の山西転戦と天津郊外進出
  一、北伐軍の山西、直隷進出とその影響
      北伐軍の山西進撃と清朝の地方統治
      太平軍の深州進出と北京における防衛体制の強化
  二、北伐軍の天津進攻と独流鎮・静海県の籠城戦
      太平軍の天津郊外到達および華北民衆との関係
      独流鎮、静海県における籠城戦と太平軍、清軍

 第三章 北伐軍の敗退と援軍の臨清攻撃
  一、北伐軍の撤退と敗走
      独流、静海戦後半の戦局と北伐軍の撤退開始
      束城村の戦いと阜城県への敗走
  二、北伐援軍の北上と臨清攻撃
      北伐援軍の派遣とその勢力拡大
      援軍の山東進出と臨清攻防戦
  三、援軍の壊滅と北伐軍の敗走
      阜城県における北伐軍と援軍の臨清撤退
      援軍の壊滅と北伐軍の連鎮、高唐州到達

 第四章 太平天国北伐軍の壊滅について
  一、連鎮、高唐州における籠城戦
      高唐州における李開芳と勝保の戦い
      連鎮における林鳳祥軍と僧格林泌
  二、北伐軍の壊滅とその影響
      連鎮における林鳳祥軍の壊滅
      勝保の処罰と馮官屯の戦い
      李開芳の投降と北伐の終焉


第二部 太平天国西征史

 第五章 太平天国の西征開始と南昌攻撃
  一、西征軍の出発と南昌攻撃の開始
      西征軍の出発とその規模、目的について
      清軍の防衛体制と南昌攻防戦の開始
  二、南昌攻防戦の長期化と西征軍の撤退
      援軍の到着と戦況の膠着
      曽天養の遊撃戦と呼応勢力、西征軍の南昌撤退

 第六章 西征軍の湖北進出と廬州攻略
  一、西征軍の湖北進出と漢陽、漢口再占領
      石祥禎・韋志俊らの九江占領と田家鎮の戦い
      太平軍の漢陽・漢口占領と呉文鎔の武昌防衛
  二、西征軍の安徽における活動と廬州攻撃
      石達開の安慶進出と地域支配
      安徽東部の戦いと太平軍の廬州攻撃
      廬州の陥落と江忠源の死

 第七章 西征軍の湖北、湖南における活動と湘軍の登場
  一、呉文鎔の死と太平軍の湖北各地進出
      湖北における地方長官の争いと咸豊帝
      西征軍の湖北各地への進攻と読書人対策
      湖北における呼応勢力の活動と地域社会
  二、曽国藩の登場と湘軍の創設
      曽国藩の生い立ちとその社会認識
      湘郷県の団練結成と湘軍創設の着手
  三、湘軍の編制と靖江、湘潭の戦い
      湘軍編制の特徴と水軍の創設
      湘軍の出撃、『粤匪を討伐すべき檄文』と靖江、湘潭の戦い

 第八章 湖南岳州、湖北武昌と田家鎮をめぐる攻防戦
  一、曽天養軍の湖南進出と岳州の戦い
      曽天養軍の湖南進出と太平軍の第二次武昌占領
      湘軍の再編制と岳州の戦い
  二、湘軍の武昌奪回と田家鎮の戦い
      湘軍の武昌奪回と太平天国、清朝
      田家鎮をめぐる攻防戦

 第九章 湖口の戦いと太平軍、湘軍の湖北、江西経営
  一、江西湖口の戦いと太平軍の湖北再占領
      湘軍の九江攻撃と湖口の戦い
      太平軍の第三次武昌占領と湖北各地への進出
  二、武漢をめぐる攻防戦と曽国藩の江西経営
      武漢をめぐる攻防戦と団練結成
      曽国藩の江西経営と陳啓邁告発事件
     
 第十章 湖北南部の戦い、石達開の江西経営と西征の終焉
  一、羅沢南の湖北救援と石達開の江西経営
      羅沢南の武漢救援と湖北南部における戦い
      石達開の江西経営と曽国藩
  二、武漢をめぐる攻防戦と西征の終焉
      漢陽、武昌の攻防戦と羅沢南の死
      石達開の武漢救援と西征の終焉

結 論


あとがき
索 引

このページのトップへ

内容説明

【まえがきより】(抜粋)

本書は十九世紀半ばの中国で発生した太平天国(一八五〇年~六四年)の前期史を、清朝の公文書である檔案史料を中心に解明しようとするものである。すでに筆者は前著 『広西移民社会と太平天国』(風響社、一九九八年)、『清代中国南部の社会変容と太平天国』(汲古書院、二〇〇八年)において、当時の中国で社会の歪みと統治の行きづまりによって人々が希望を失い、キリスト教と復古主義的な大同ユートピアを融合させた上帝教に引き寄せられた事実を指摘した。また『金田から南京へ――太平天国初期史研究』(汲古書院、二〇一三年)はシャーマンの登場をきっかけに、あるべき中国への回帰をめざして蜂起した太平天国が南京を占領するまでの過程を考察した。太平軍は宗教的情熱に支えられた厳しい規律で人々の支持を集めたが、プロテスタント宣教師の偶像崇拝批判に影響された上帝会の排他的な教義は清朝関係者に対する容赦なき殺戮を生んだ。それは「文明化の使命」を自任した近代ヨーロッパ文明がアジアにもたらした負の側面であったと結論づけた。
 本書は南京占領後の太平天国が行った二つの軍事行動を通じて、一八五六年の天京事変以前の太平天国について検討する。その一つは北伐即ち北京攻略であり、もう一つは長江中流域を舞台に行われた西征である。これらは太平天国が安定した新政権をうち立てるために必要な作戦であり、その成否は太平天国の命運を左右した。本書は近年公刊された檔案史料集に加え、筆者が台湾、中国および日本国内で収集した新史料を用いてこれらの歴史を可能な限り具体的に明らかにする。また太平天国が長江中流域で行った地域経営に注目し、この地で太平軍のライバルとして登場した曽国藩率いる湘軍と比較しながら、両者が近代中国における地方勢力の台頭に与えた影響を考察する。それは新たな中国近代史像を構築するうえで重要な作業になると思われる。



Marching to the North, Marching to the West

A Historical Study of the Early Period of the Taiping Rebellion, 1853-1856

このページのトップへ