目次
序 章 道教研究の方法と課題
序章補遺 道教の信仰・霊験と俗講・変文―遊佐昇『唐代社会と道教』の行間を読む―
第一章 桃源・白雲と重玄・本際―王維と道教―
第二章 太清・太一と桃源・王母―杜甫と道教に関する俯瞰―
第三章 九幽経小攷―初唐における代表的救済経典―
第四章 三一と守一―『太平経』を巡る太玄派・重玄派と茅山派との関わりを包摂して―
第五章 道教の色彩学―中国宗教の非言語コミュニケーション―
第六章 仙女と仙媛―沈宋の文学と道教―
第七章 李白と唐代の道教―レトロとモダンの間―
第八章 李白女性観初探―共生と相思―
第九章 柳文初探―柳宗元と道教―
第十章 韓愈の死生観と道教―老荘・金丹・神仙・女性観―
第十一章 聖女・中元と錦瑟・碧城―李商隠と茅山派道教―
第二部 宋代の文人と道教
序 章 宋代道教と雲笈七籤
第一章 欧陽脩の青詞について―欧陽脩と道教思想―
第二章 曽鞏と麻姑信仰―麻姑に顔色を妬まるるに似たり―
第三章 王安石と道教―太一信仰との関わりを中心に―
第四章 蘇洵の水官詩について―蘇洵と道教―
第五章 玉皇大帝と宋代道教―蘇軾を中心として―
第六章 蘇轍と道教―「服茯苓賦」・『霊宝度人経』・「抱一」・「三清」を中心に―
第七章 斜川集を読む―蘇過と道教―
第八章 蘇符と蘇籀―道教をめぐる両蘇とその孫―
あとがき
索 引(人名・書名)
内容説明
【はじめにより】(抜粋)
宋代は、第四代の仁宗の時代に儒教が復活したことが特筆大書されるが、その実、太宗・真宗時代の崇道政策の影響は、仁宗時代以降も顕著で、皇室を始めとする玉皇大帝に対する尊崇、太一信仰の継承などの道教信仰に欧陽脩・王安石・蘇軾たちは多く関わりを持ったのである。就中、道教的詩人とも言える蘇軾の道教に対する傾倒は顕著で、彼こそ太宗・真宗時代の崇道政策の申し子と云えるのではないだろうか。蘇軾の名作として知られる前後の赤壁の賦は最も濃厚な道教色を湛えた作品なのである。
本書の第二部は、この蘇軾を含む唐宋八大家の中の宋の六人と道教との関係、及びこれと交錯するが、蘇洵・蘇軾・蘇轍・蘇過・蘇符・蘇籀らの蘇氏一族と道教との関係を考察した論考で構成されている。
……王維・李白・杜甫と道教との関わりを考察した論考の外、重玄派の『九幽経』などの道教経典、茅山派と関わりを持った初唐末の沈佺期・宋之問に関する論考を含むが、また、韓愈・柳宗元と道教との関係を考察した論考をも収録し、唐宋八大家と道教の研究も完結させた。共に道教的詩人と言われる李白と蘇軾に関する論考を対照するならば、唐代道教と宋代道教との相違もまた、自ずからから浮かび上がることであろう。更に、李白と韓愈に関する論考を比較するならば、道教の女性観と儒教の女性観の相克についても明白になる筈である。
Ch‘ih pi and Pi ch‘eng――The Taoism and Literati of T‘ang and Sung