内容説明
「中院一品記」は、南北朝時代を生きた、公卿・中院通冬(1315~63)の日記であり、その自筆本が国立公文書館(内閣文庫)・東京大学史料編纂所・京都大学総合博物館・大和文華館に所蔵されている。また写本としては、江戸時代初期に中院通茂が原本より転写した本文を祖本とするもの、改元関係の部類記から抜出して一書としたと思しいもの、などが知られている。
本影印本収録の自筆本8本と新写本(江戸時代の写本)2本のうち、自筆本7本はごく最近新たに発見されたものである。「中院一品記」の自筆本の多くは東京大学史料編纂所に所蔵されているが、この新発見の自筆本は、史料編纂所所蔵の自筆本と闕なく直接につながるものもあり、極めて貴重である。また新写本(江戸時代の写本)は、「中院一品記」の全体像を把握するのに有益である。本影印本によって、逸文も含めて現在知られている「中院一品記」のほぼ全ての記事を見ることが可能となった。
【自筆本】
①『康永改元記』 十四枚(除表紙) 古34-582
②『法勝寺回禄注進状』 一軸(全2紙) 古33-550
上記①②は、康永元年(暦応5年)春夏記に属し、それぞれ東大史料編纂所・京大総合博物館所蔵の断簡と直接・間接に接続する。
③『太政大臣拝賀雑事』 一軸(全22紙) 古35-620
第5紙までは貞和4年11月10日に行われた洞院公賢の太政大臣拝賀に関する雑事定の定文。第6紙以降は康永元年8月5日から10月23日。④の第1紙に闕なく続く。
④『中院一品記』 一軸(全24紙) 古34-585
以前より知られていた自筆本。康永元年8月~12月・貞和元年(康永4年)正月1日。⑤下巻に闕なく続く。
⑤『康永公事日記』 二軸 古34-585 上巻(全13紙) 下巻(全27紙)
上巻は貞和元年(康永4年)3月13日から27日。下巻は貞和元年(康永4年)正月2日から2月23日。
⑥『弁官下文』 一枚 古33-571
貞和元年(康永4年)2月23日条に貼り継がれていた文書。⑥⑦とも⑤下巻に闕なく続く。
⑦『国司解文』 一軸(全4紙) 古33-542
各紙がそれぞれ一通の文書。⑥と同じく貞和元年(康永4年)2月23日条に貼り継がれていた文書。
⑧『康永宣旨草』 一軸(全3紙) 古33-561
第1紙と第2紙とで一通の文書を構成し、第3紙はこれで一通の文書。3月19日条に貼り継がれていた文書。
【新写本】
⑨『中院一品記』 宝暦5年写 二冊 162-163
⑩『中院一品記』 江戸時代中期写 一冊 162-162
⑨は建武3(1336)年2月から貞和4(1348)年9月。⑩は部類記から抜出して一書としたと思しいもの。