内容説明
【主要目次】
序 ………………………………………………………………………………………… 小松 謙
前言/凡例
序章 諸版本の体裁から見た刊行経緯と受容のあり方―武定侯郭勛刊本の位置づけ―
第一節 嘉靖壬午序本の特異性と修須冉子序の謎
【資料一】『三國志演義』諸版本の書誌情報・書影
第二節 「修須冉子」の正体―明代の家蔵書目録に見られる『三國志演義』の記録から―
【資料二】郭勛家刻本の序文
第三節 現存の嘉靖壬午序本の刊行者(1)―郭勛刊本か内府刊本か―
第四節 現存の嘉靖壬午序本の刊行者(2)
―明代の官蔵書目録に見られる『三國志演義』の記録から―
第五節 嘉靖壬午序本とその他の諸本の関係
導 論 篇
第一章 成立と展開―段階的成立の可能性―
第一節 「原演義」から諸版本へ―嘉靖壬午序本と葉逢春本―
第二節 「羅貫中原本」の成立と「原演義」への発展―『三國志演義』の素材―
前篇 「原演義」から諸版本へ
第二章 三系統の版本の継承関係―簡本系版本をてがかりに―
第一節 葉逢春本の脱落箇所について
第二節 原演義から三系統の版本が派生するまで
第三節 版本間での人物像の違い
第三章 三系統の異同の全体像から見た成立過程の考察
―序盤・中盤・終盤の成立時期の違い―
第一節 序 盤 第二節 中 盤 第三節 終 盤
附考1 劉龍田本が拼凑本である可能性について
第四章 関索説話に関する考察
第一節 花関索説話と関索説話―先行研究と問題点の整理―
第二節 原演義に関索説話は存在したか(1)―関索から魏延へ―
第三節 原演義に関索説話は存在したか(2)―関索から馬岱へ―
第四節 馬岱の英雄性・神話性
第五節 劉龍田本と周曰校本の関係―どちらが先行するテキストか―
附考2 嘉靖壬午序本、周曰校本、夏振宇本について
附考3 「文人的志向」なる書き換え、その起こり
後篇 「羅貫中原本」の成立と「原演義」への発展
第五章 執筆プロセスに関わる考察
第一節 主要人物の活躍部分―『平話』と『三國志』(及び裴松之注)の利用―
第二節 サブキャラクターに関するエピソード―『綱目』に拠った増補か―
第三節 呉の物語の創作
第六章 『三國志演義』と『蜀漢本末』―南蛮王孟獲討伐を中心に―
第一節 『蜀漢本末』の刊行経緯等
第二節 『演義』執筆における『蜀漢本末』の利用
第三節 『蜀漢本末』の再評価
第七章 終盤の後補―結尾の部分を中心に―
第一節 『三國志』(及び裴松之注)の利用法
第二節 『綱目』の利用法
第三節 無視された『晉書』と『資治通鑑』
第四節 『蜀漢本末』の影響
結 語/初出一覧/索 引
【「前言」より】(抜粋)
文学というものは、人類の辿ってきた思想・思考面での発展と歴史が、文字で記録されて遺された遺産である。これを研究することは、人類がいかなる道を通って進歩してきたのか、知識欲の方向性というものを見出すことに繋がる。そこでやっと、これから人類はどこへ向かうべきかということを考えることができる。
『三國志演義』という作品は、その恰好の研究対象である。というのは、この小説の誕生と発展の歴史が、大衆の読書という行為の歴史と完全にリンクしているからである。
本書は『三國志演義』という作品の変遷史を辿る研究であるが、その変遷史を、大衆の読書という行為の誕生と発展という歴史の中に置き、人間の知識欲が何を求め、何を追って来たのかを考え、そしてこれから人類は何を目指すべきなのかを考える一端となるよう願う。