内容説明
【主要目次】
前書き 「中国の近代性」にかかわるいくつかの問題
第一部 導入篇
序 章 生活書店及び鄒韜奮研究
第一章 近代中国(上海)のジャーナリズム環境
第二部 人物篇:生活書店の知識人たち
第二章 ジャーナリスト鄒韜奮の発展
第三章 戦時中国における鄒韜奮の政治活動
第四章 生活書店の人々:黄炎培・杜重遠・胡愈之・徐伯昕を中心に
第三部 書店篇:近代出版メディアの一つのあり方
第五章 生活書店の募金活動
第六章 戦時下の経営管理
第四部 言説篇:メディアとナショナリズムの交錯
第七章 メディア化された共同体:生活書店出版物の投書欄
第八章 事例分析:投書欄における「恋愛と貞操」をめぐる論争
第九章 新生事件からみる日中メディア間の対抗
第十章 「国貨」をめぐる言説の浸透性検証
終 章 生活書店から三聯書店、そして再び生活書店へ
付録(史料抄録)「団結御悔的幾個基本条件与最低限要求」(1936)など
関連略年表 文献一覧 後書き 論文初出一覧 人名索引 事項索引 英文要旨 中文要旨
【前書き「中国の近代性」にかかわるいくつかの問題】より(抜粋)
中国国外におけるジャーナリズムや社会学的研究において、中国に対する関心の多くは、やはり中国観察(China watching)だと、すなわち大陸中国の政治や社会の出来事を注視し解読し、ときには厳しい批判を加える姿勢だと、筆者には思える。本書も、筆者が以上に述べたようなアカデミックな関心とジャーナリズム的関心の双方から出発したものである。本書の研究視座の設定及びそれに伴う検討作業にいくらかの独創性があるとすれば、近代の産物であるマス・メディアの果たした役割、当時の知識人たちとのかかわり、さらにそれらと近代中国のナショナリズムとの関係を、1930~40年代の中国(上海を中心に)という限定された歴史過程のうちに見出そうとした試みにある。これは、本書での検討のみでは極めて不十分であるということは筆者自身自覚するところであるが、一つのチャレンジである。具体的な歴史的事象に基づいた検討を出発点としなければ、いかなる(一部のジャーナリズム言説のような)批判も宙に浮いたものとなり、結局は一時的な出来事を追う形で終わってしまうだろう。それゆえ、歴史的な一次資料をもとに、必要と思われるデータを抽出し、資料として活用し、実証的な研究を目指した。