ホーム > 汲古選書65 明代の倭寇

汲古選書65 明代の倭寇

汲古選書65 明代の倭寇

◎名著『明代倭寇』の日本語版刊行なる――中国史・日本史研究者必備の一冊

著者 鄭 樑生
ジャンル 東洋史(アジア)
東洋史(アジア) > 明清
シリーズ 汲古選書
出版年月日 2013/12/24
ISBN 9784762950650
判型・ページ数 4-6・284ページ
定価 3,850円(本体3,500円+税)
在庫 在庫あり
 

目次


日本語版の刊行によせて(大阪市立大学名誉教授 森田 明)
序 章
 第一章 明朝の海禁と倭寇
第一節 倭寇の起因      第二節 明朝の海禁政策     第三節 明朝の倭乱対応措置
第二章 明代倭乱の実情
第一節 正徳以前の倭乱    第二節 嘉靖二〇年代の倭寇   第三節 嘉靖三〇年代の倭寇
第三章 倭乱平定困難の理由
第一節 政治腐敗と海防荒廃  第二節 軍紀の崩壊と戦技の拙劣 
第三節 内通者の出現と督撫の無策
第四章 倭乱の国家社会への影響
第一節 明朝の財賦への影響 第二節 倭乱による文官と将兵の死傷
第三節 城鎮の失陥と戸の損耗
終 章
  編訳者あとがき/索 引

このページのトップへ

内容説明

【日本語版の刊行によせて】より(抜粋)

まずは鄭樑生先生の悲願の日本語版『明代の倭寇』が、師弟の強い絆によってここに漸く上梓をみたことに満腔の敬意と祝意を表したい。

畏友鄭先生は、仙台の東北大学院で豊田武教授の指導の下で、本格的な学問研究に励まれ、筑波大学で田中正美・野口鉄郎両教授の指導を受け、『明日関係史の研究』によって文学博士の学位を取得された。

誠実、篤学な先生の関心は多岐にわたっているが最も精力を傾注されたのは、明日関係の交錯する重要課題の一つの倭寇問題に外ならなかった。先生の倭寇研究は、畢生のテーマとして、持続的に追求され、その関連論文は三十編近くに及んでいる。特に研究上の論点は、倭寇対策と明朝財政との関係、江南地域における倭寇被害の社会的影響、倭寇の趨勢と海禁政策、明朝の海防体制と官僚制度等と、あくまでも、明代の政治、社会、外交を機軸とした実証的な考察がその特色である。その精細な考察を支えているのは、台湾をはじめ、中国、日本、朝鮮等における倭寇に関する厖大な関係史料の博捜とそれらに基づく緻密な考証に外ならない。因みにその研究のための飽くなき探究心による、大量の蒐集史料は『明代倭寇史料』(全七巻)として公刊されており、倭寇研究上の必見の重要資料集である。『明実録』をはじめ、広汎な関係地誌、各国の各種文集類等と一つとして余すところがない。これらの史料によって集大成されたのが、二〇〇六年に脱稿した『明代倭寇』であったが、公刊されたのは、没後一年の二〇〇八年三月、台湾の文史哲出版社からである。しかし、先生の更なる目標は、より充実した内容の日本語版の『明代の倭寇』の刊行によって自らの研究成果を広く日本の研究者や関心のある人々に問いたいという念願にあった。(中略)

二〇〇六年春頃から逐次先生の原稿が手元に届き、微力ながら文章や記述に若干の訂正や、卑見を加え返送するという作業が始まった。そして二〇〇六年の末には第一回の作業がほぼ終わり、夏に更に推敲を加えれば、二〇〇七年の末には成稿が得られるものと期待していたのであった。ところがまさに青天の霹

靂の例え通り、二〇〇七年三月二五日卒然として先生は不帰の客となられ、その訃音に天を仰いだのであった。それからは先生の心血を注いだ未完の原稿を前に茫然自失、暗然として無為に過ぐること数年、誠に慙愧に堪えないでいたところ、幸いにも恩師の遺志をぜひ実現したいという、止み難い強い意思の教え

子の真情に接し、私の長い先生の悲願に対する挫折感と虚脱状態も漸く蘇生の機を得ることができたのである。

このページのトップへ