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江戸時代後期の水戸藩儒

――その活動の点描――

江戸時代後期の水戸藩儒

◎好事家がサロンを形成し、街道と宿駅が整備された文政期、修史事業を通して水戸藩儒の諸活動を概観する

著者 井坂 清信
ジャンル 日本史
日本史 > 近世
出版年月日 2013/10/02
ISBN 9784762942112
判型・ページ数 A5・636ページ
定価 13,200円(本体12,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

第一章 文政期における水戸藩の『大日本史』編纂事業(年次順考察)
――国立国会図書館所蔵『藤田幽谷書翰』所収書簡にみる――
第一節 文政六年書簡にみる作業の状況
第二節 文政七年書簡にみる作業の状況     *文政七年書簡にみる作業の状況(補足分)
第三節 文政八年書簡にみる作業の状況     第四節 文政九年書簡にみる作業の状況
第五節 執筆年次未確定書簡にみる作業の状況  補説 藤田幽谷・青山拙斎略伝
第二章 文政期における水戸藩の『大日本史』編纂事業(主題別考察)
――国立国会図書館所蔵『藤田幽谷書簡』所収書簡にみる――
第一節 文政期における『大日本史』紀伝の校訂・上木作業の進捗状況
本紀/列伝〔皇子伝・諸臣伝・将軍伝・将軍家臣伝・文学伝・歌人伝・孝子伝・義烈伝・列(烈)女伝・
方伎(技)伝・叛臣伝・外国(諸蕃)伝〕
第二節 文政期における『大日本史』紀伝の校訂・上木作業の推進をめぐって
青山拙斎総裁就任後の江・水両史館員の志気と賜宴のこと/中清書本・清書本等の紛失騒ぎ/清書・上
木作業の中断のこと/豊田天功の紀伝校訂作業への参画/中山平四郎(信名)の紀伝校訂作業への貢献
と牧園進士のこと/名目伝に係わる諸々のことども/『太平記』時代の諸伝の校訂/水館総裁藤田幽谷
の江戸出府
第三章 小宮山楓軒の筑波紀行――『遊筑坡山記』の解題と翻刻――
『遊筑坡山記』解題/『遊筑坡山記』翻刻
第四章 『島友鷗手簡』にみる小宮山楓軒と二本松藩士島友鷗の交友
第一節 楓軒の湯治旅行と友鷗との再会
第二節 当代の社会的出来事に関する主な情報の交換
天候や農作物の作柄・米価等への関心と飢饉・救恤・騒擾等のこと/疱瘡の流行のこと/「将軍家御転
任御内勅」のこと/斉脩の死と斉昭の襲封・結婚・官位昇進のこと/「義公江御贈官位」のこと/丹羽
侯褒賞及び侍従任官のこと/近藤重蔵処罰のこと/異国船のこと/「清国戦争之風説」のこと/「薩州
士庶漂流之記」のこと/「桑折県令」のこと
第三節 当代の学者・文人等の著作・人物評等に関する主な情報の交換
水戸藩の人物について〔青山拙斎・立原杏所・川口緑野・石川久次右衛門(久徴)・高田(小山田)与清〕
水戸藩以外の人物について〔主な活動の地が江戸の人物:安積艮斎・市河寛斎・佐藤一斎・柴野栗山・
本多忠憲・牧野泰助・松平定信・屋代弘賢・山崎美成/主な活動の地が江戸以外の人物:猪飼敬所・
頼山陽・広瀬蒙斎・東里将監・鈴木武助・鍋田舎人・小此木玄智・衣関順庵・詩僧万空・峨眉山人〕
第四節 史実等の考証や歴史的人物に係わる主な情報の交換
「仏国禅師家集并觽図」のこと/高橋紹運のこと/「大内備前之姓氏」のこと/「加藤清正手痕之摸字」
のこと/「畠山義継後室」のこと/「心越禅師書画帖」等のこと/柳沢吉保の年譜のこと/「白石先生
経邦典例」のこと/「田沼山城を佐野善左討取候記」こと/「伊達騒之実録」のこと/「四国土着之武士」
のこと/那須国造碑建立のこと/米沢藩高家のこと/二本松藩の制札のこと/名主の称呼のこと/「白
山ニ棲候雷鳥」のこと/山繭のこと/「麒麟及虎児之諺語」のこと/「栴檀ハ二葉ヨリ香ノ語」のこと
第五節 書物に関する情報の交換と貸借図書一覧
第六節 島友鷗の最期と後日譚
第五章 川口緑野著『台湾鄭氏紀事』刊行始末
第一節 川口緑野の人物評と『台湾鄭氏紀事』刊行への異議
第二節 『台湾鄭氏紀事』刊行決定の手続き上の問題点
第三節 『台湾鄭氏紀事』草稿のもつ内容上の問題点
書法上の問題点/事実関係の補訂及び字句の誤りの訂正すべき点/主な問題点の現行本との比較
第四節 『台湾鄭氏紀事』の書名決定の経緯
第五節 『台湾鄭氏紀事』の序文及び跋文について
付 録 『議台湾別志』綴じ込み書簡七通の翻刻
第六章 『水城行役日記』にみる川口緑野の水戸出張
第一節 水戸への往路
第二節 水戸出張中に従事した諸業務
国史(大日本史)上表文の検討/国史(大日本史)紀伝の校訂/世子(第八代藩主斉脩)の諱の撰進/
宗廟の配享札の検討/大広間講釈/藩主治紀の鷹狩りに扈従/藩主治紀の出府の見送り
第三節 城下近傍の散策と諸友等との交遊
文化七年三月/文化七年四月/文化七年五月
第四節 領内各所の遊覧
成沢村の東漸寺温泉入湯/太田の瑞竜山自拝/長者墟散策/笠間城(領外)視察断念とその要害の聞書
き/静神宮(社)参拝/礒湊の賞遊/塩子観音参拝
第五節 江戸への復路
第七章 津藩の『聿脩録』刊行と水戸藩
――国立国会図書館所蔵『藤田幽谷書簡』所収書簡を中心に――
第一節 『藤田幽谷書簡』中に『聿脩録』関連書簡が存在する理由
第二節 津藩からの『聿脩録』序文執筆依頼受諾の条件と序文の文章の検討
水戸藩側からの書名変更の要請/『聿脩録』関連の藤田の意見書が惹き起こした波紋/藤田の提示する
序文執筆の要諦/『聿脩録』序文の表記に関する具体的な問題点の検討
第三節 水戸藩側から提起された『聿脩録』本文への疑義
『聿脩録』本文中の表現上の問題点の指摘/『聿脩録』本文中の事実関係に関する疑問点の指摘
第四節 『聿脩録』をめぐる水戸藩側の紛糾の実態と津藩側の対応
藤田の出府前の水戸藩側の内情/藤田の出府後の展開と朝川善庵の対応
〔参考資料〕徳川斉脩序文、藤堂高兌自序、林衡跋文
第八章 豊田天功と青山延光の交友関係の一側面
――国立国会図書館所蔵『豊田天功書簡』所収書簡にみる――
第一節 徳川斉昭の『息距編』編纂及び『破邪集』翻刻をめぐって
『息距編』関連の書簡の検討/『破邪集』関連の書簡の検討
第二節 豊田天功の著作『靖海全書』『北島志』『北虜志』をめぐって
『靖海全書』関連の書簡の検討/『北島志』及び『北虜志』関連の書簡の検討
第三節 青山延光の著作『赤穂四十七士伝』『南狩野史』をめぐって
『赤穂四十七士伝』関連の書簡の検討/『南狩野史』関連の書簡の検討
第九章 国立国会図書館所蔵の内藤耻叟旧蔵書
内藤耻叟の略歴と国立国会図書館所蔵内藤旧蔵書の特徴/国立国会図書館所蔵の内藤耻叟旧蔵書一覧
余 論 水戸藩の『大日本史』と国立国会図書館所蔵資料
――所蔵資料への書誌学的・文献学的アプローチの試み――
あとがき

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内容説明

【まえがき】より

徳川家康によって長い戦乱の時代に漸く終止符が打たれてから約半世紀が経過した頃、ついに日本全国の政治的な統一が完成をみた。折しもわが国では、この時期頃から学問が興隆し、書物の出版も増加の傾向をみるようになってきた。そしてこの時期には、幕府による『本朝通鑑』の編纂等が行われるなど、いわゆる第一次歴史ブームともいうべき現象が生起した。水戸徳川家の第二代藩主光圀が『大日本史』の編纂を始めた明暦年間とは、このような時代であった。『大日本史』の編纂が開始されて以降、この事業は水戸藩儒にとって最大の関心事となり、最も重要な課題として認識されることとなった。水戸藩では、この編纂事業に関連して、史実の考証に資するため、古典籍の校訂、諸工具書の編纂等も行ったのであるが、その成果は、その後の近世の学問の発展に大きく貢献したと評価されている。・・・江戸時代も半ば以降になると多種多様な出版物が大量に刊行され、社会全般に亙って各種情報の獲得が容易になり、情報化社会が進展してきたことは既に知られているところである。暫く停滞していた水戸藩の修史事業に中興の萌しがみえ、再び活況を呈してきたのは、天明六(一七八六)年に立原翠軒が彰考館総裁に就任し、『大日本史』の編纂に専念するようになってからのことであるが、本書では、特に文政期における同書編纂事業の進捗状況を瞥見しておいた。奇しくもこの時期は、わが国に第二次歴史ブームの到来をみた時期であったのである。本書に収載した論稿の大部分は、水戸藩の修史事業中興以降の、しかし幕末の血で血を洗う激動期を迎える少し前の、まだ全てにおいて多少のゆとりを残していた時代を背景に営まれた水戸藩儒の諸活動の一端を概観したものである。

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