大東急記念文庫善本叢刊中古中世篇 11 諸芸Ⅱ 11
武家諸作法抜書・君台観左右帳記・御飾棚之記・蹴鞠之条々大概・花伝書抜き書き条々・風流十八番抜書
著者 | 島津忠夫 責任編集 |
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ジャンル | 日本古典(文学) 日本古典(文学) > 中古文学 日本古典(文学) > 中世文学 |
シリーズ | 大東急記念文庫善本叢刊 大東急記念文庫善本叢刊 > 中古中世篇 |
出版年月日 | 2013/10/10 |
ISBN | 9784762934704 |
判型・ページ数 | 菊判変・546ページ |
定価 | 19,800円(本体18,000円+税) |
在庫 | 在庫あり |
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内容説明
『武家諸作法抜書』(第七冊~第十冊)江戸極初期写 十冊 著者未詳 ※第10巻に第一冊~六冊収録
解題:島津忠夫・岡崎久司・小川剛生・中本大・米田真理子・落合博志・村木敬子
現状では十冊になっており、各冊の主な内容は、第一冊が「君台観左右帳記」、第二冊が聞香・軍陣、第三冊以降が、弓術故実・弓馬故実・軍陣での作法・饗応や座敷での作法他、さまざまな故実の集成となっている。第一冊・第二冊には目録を持たないのに対して、第三冊~第十冊は始めに目録が記され、いささか内容を異にする。「未得電払」の印記を持つ武也なる人により、全巻一筆で書写されているが、この大部の武家作法書を書写させたのは誰かということは明らかではない。第四冊に「同此儀を小笠原宗信申されしは」とあり、この宗信は、足利義政・義尚・義材・義澄と四代の将軍に仕えた京都小笠原氏の小笠原備前守政清の法名で、弓馬故実家であり、随所に伊勢流・本間流・武田流などに対して当流といっているのは、京都小笠原流をさすと見られる。足利義教以降、室町将軍の師範となったのは、小笠原宗家ではなく、京都小笠原家であり、本書に収められたのもまた京都小笠原家の武家儀礼の故実であった。なお、第三冊の弓、第八冊の能、第九冊の鞠の記事が、版本『甲陽軍鑑』巻七と重なることも注目される。
『君台観左右帳記』 室町末期写 一冊 相阿弥編録 解題:岡崎久司
『君台観左右帳記』には、従来二つの伝流があるとされてきた。一は、文明八年(一四七六)、能阿弥が大内左京大夫政広に宛てた編録本を祖とする一書。二は、三十五年後の永正八年(一五一一)、孫の相阿弥が源次吉継なる者に書き与えた編録本を祖とする一書。そして現存最古写本は、永禄二年(一五五九)の奥書を持つ東北大学本ということで異論を見ない。現存の『君台観左右帳記』の主要諸本七本を通覧すると、概ねその内容は「一、中国絵画の画人録」「二、座敷飾り法」「三、飾り諸道具の品名・品評・解説」の三部に大別できるが、「一」に二つの伝流を分ける片鱗のような手がかりがある。両者を判別する目安に従えば、大東急本は相阿弥本系の一書としてよいが、二祖・二系を問わず、主要諸本の一本一本が、実は臨機に応じた増補改訂本であり、同系の東北大学本との比較検証では、本書は明らかに東北大学本よりも後の書写にかかると思われるが、こと両本の底本成立は、本書が東北大学本に先行する可能性が留保される。
『御飾棚之記』 室町末期写 一巻 鑑岳真相(相阿弥)著 解題:生形貴重
本書は「御飾棚之記」と題されているが、内容は、室町将軍に仕えた同朋衆の能阿弥・相阿弥がまとめた『君台観左右帳記』の一異本と考えられる。足利義政に仕えた能阿弥は、書院造りの殿中飾りを確立して唐物荘厳の方式を確立するが、その孫に当たる相阿弥も同様に殿中の飾りの方式を秘伝として伝えていた。本書は相阿弥が記した『君台観左右帳記』の一本で、冒頭から書院棚飾りの前半を欠落させた零本といえる。おおむね本文の内容は、①唐絵筆者の格付、②飾り棚の次第、③書院飾りの図、④茶の湯棚の図、⑤彫物、⑥胡銅、⑦茶碗、⑧天目茶碗、⑨茶壺、⑩茶入について飾りの方式や格付けがまとめられている。本書は、そのうち①~③の途中までが無く、④⑩⑧⑦⑥⑤の順となっている。末尾に相阿弥著と伝承される『御飾記』と共通する燭台の絵図と聞香炉の灰の抑え図が追加されており、この点は諸本研究上の課題と考えられる。
『蹴鞠之条々大概』 長享二年(1488)写 一巻 宋世(飛鳥井雅康)著 解題:佐々木孝浩
歌鞠両道において朝幕の師範として活躍した飛鳥井雅康(一四三六~一五〇九)の蹴鞠伝書。室町期の飛鳥井家では、蹴鞠の基本的な知識や作法を記した伝書と、歌道における歌会作法や懐紙・短冊の歌様に関する伝書を巻子本に仕立て、伝授奥書を加えたものを、免許的に守護大名やその被官等の武士、神官等に与えることにより、師弟関係を強固にして、家の安定を図りつつ動乱の時代を乗り越えようとしていた。伝える知識や作法は相手の身分や能力などに応じて増減や組み替えが行われたようで、同一の内題を有していてもその内容は伝本ごとに少なからぬ違いがある。『蹴鞠(之)条々大概』は、雅康が門弟に与えた主要な鞠伝書の一つであるが、祖父雅縁にも同題の伝書があり、また兄雅親やその息雅俊等の『蹴鞠条々』とも密接な関係がある。該本の奥書に見える宛先の「寺町三郎左衛門尉道隆(通隆)」は、管領細川政元の重臣であった人物。
『花伝書抜き書き条々』 天文二十一年(1552)写 一巻 八木遊花著 解題:宮永一美
天文二十一年(一五五二)十一月吉日、池坊中将公から花の伝書一巻を受けた八木遊花が、平幸貞に伝授した花伝書。花型の図を描き、その花型について簡略な説明が書かれる形式で、十五の花型と、棚に飾ったときの室礼を表す図三点の、計十八図で構成される。内容は、正月一日・五節句・移徒・出陣・元服・聟入り・袴着・紐おとし等、年中行事や儀式に際して立てる花型が描かれる。花型図は、様々な形の花器に数種の花材を生けたもので、枝の形や花材の配置を表す簡素な描き方で、花・葉・枝の部分に朱・緑・茶色で彩色を施している。近世に至り様式化されていく花型と「役枝」の成立過程を読み取る上で大変興味深い伝書である。八木遊花・平幸貞については不詳であるが、「越州在」と書かれることから、戦国期に越前在住の人物が伝授した花伝書ということで、数少ない地方における立花の芸能普及の事例を示す史料として貴重である。
『風流十八番抜書』 万治三年(1660)写 一帖 大蔵虎明著 解題:川島朋子
狂言風流は〈翁〉の中で狂言が演じる祝言的芸態である。本書には十八番の狂言風流の詞章が収められる。虎明が記した狂言風流の詞章としては、本書の他に虎明筆による『風流之本』が存在する(以下、「大本」)。こちらは三十番を所収しており、順序は異なるものの、本書の十八番はいずれもこの大本に含まれる。両書の本文についてはこれまでほとんど異同がないとされてきたが、二箇所のみ、異同が見られる。この異同に虎明の意図的な改変が反映されているとすれば、本書の方が大本の後に成立したことになろう。両書の奥書にいう「古本」「古来之本」は虎明の父、虎清から伝えられていたものであろう。虎明は父からの相伝に自身の作など新たな作品を加え、大本、次いで本書を記したと思われる。十八番を抜き書きした理由や目的は不明だが、虎明によってより完成された狂言風流の形が本書には反映されていると考えられ、貴重な一冊と言える。