目次
一 乾 二 坤 三 屯 四 蒙 五 需 六 訟
七 師 八 比 九 小畜 十 履 十一 泰 十二 否
十三 同人 十四 大有 十五 謙 十六 豫 十七 随 十八 蠱
十九 臨 二十 観 二十一 噬嗑 二十二 賁 二十三 剥 二十四 復
二十五 无妄 二十六 大畜 二十七 頤 二十八 大過 二十九 坎 三十 離
三十一 咸 三十二 恒 三十三 遯 三十四 大壮 三十五 晋 三十六 明夷
三十七 家人 三十八 睽 三十九 蹇 四十 解 四十一 損 四十二 益
四十三 夬 四十四 姤 四十五 萃 四十六 升 四十七 困 四十八 井
四十九 革 五十 鼎 五十一 震 五十二 艮 五十三 漸 五十四 帰妹
五十五 豊 五十六 旅 五十七 巽 五十八 兌 五十九 渙 六十 節
六十一 中孚 六十二 小過 六十三 既済 六十四 未済
おわりに
索 引
内容説明
【本書より】
本書は『易』六十四卦(か)の卦辞・爻辞(経文(けいぶん))と、それらを解説した伝と称される文章につけた蘇東坡注の中から、易思想の根本に連なる言葉や、人生の参考になるような成句を抜き出し、あわせて蘇東坡の易理解をコンパクトにまとめようと企てた。東坡の言葉を味わうだけでなく、『易』解釈の基本にもできる限り言及した。もともと、読者の対象として、易学に初歩の大学生を選んだため、基礎的な用語に触れすぎている嫌いがあるかも知れない。しかし、漢文が堪能な人にとっても、易学は難解であり、とっかかりで挫折しやすいという声も耳にする。本書のような記述が、少しでも『易』の理解に役立つことになれば幸いである。
易占いは相変らず人気がある。しかし、古来からの易学は宇宙観、人間観、政治観、宗教観などが研究され、倫理学、道徳学、芸術学、建築学、医学などとも結びつけられてきた。どちらかといえば、占いよりもこちらの方が主流であった。しかし、本書は難解な学問を肩肘張って追究しようと身構えたものではない。東坡には名言が多いから、『易』につけた東坡の注釈を読みながら、そこに見られる彼の言葉を味わってみたいと考えている。しかし、味読は同時に彼の思想の核心の一部に触れることにもつながる。気軽に鑑賞しながら、味わいを深めるのは読者次第ということになる。なお、繋辞伝の章番号については、朱子の『周易本義』の分類に従った。
蘇東坡には「春宵一刻値千金」とか、「人生字を識るは憂患の始めなり」とか、「盧山の真面目を識らざるは、只身此の山中に在るに縁る」など、よく知られた言葉が残っている。人口に膾炙された言葉でなくとも、機知にあふれた着眼で、人生の思いがけない真実をあぶり出すような言葉もしばしば見られる。
本書では、彼の残した『易』注釈の中から、そのような片鱗をうかがわせるもの、易思想の根本につながるものなど、ごく短い文章を選んで解釈を施し、『易』理解のための基本的な法則にも言及した。政治、文学、芸術、医学、料理と多方面な才能を発揮した蘇東坡の文章が、論文に取上げられることは驚くほど多いが、『易』に関連した言及は、数が極めて少ないのが実情である。首尾まとまった『東坡易伝』の著作を残しているにもかかわらず、この方面の東坡はまだ十分に認知されていないようである。本書出版の一つの意味もこの点にある。