目次
第一部 論文編
総論部 総論――和歌画賛とは何か――
各論部 各論部概要
Ⅰ 賛の表現
第一章 清水浜臣『泊洦舎集』の画賛
第二章 伴蒿蹊の画賛――和歌と和文と――
Ⅱ 画賛制作の場
第三章 香川景樹の画賛――歌日記を中心に――
第四章 千種有功の画賛――画賛制作と流通の一側面――
Ⅲ 画賛歌集の編集
第五章 本居大平の画賛――宣長の後継者として――
〔補記1〕書画集『落葉の錦』について
〔補記2〕月斎峨眉丸画・本居大平賛「芸妓立姿図」について
第六章 香川景樹の画賛歌集『絵島廼浪』と明治の桂園派歌壇
Ⅳ 「題」としての絵画
第七章 村田春海の題画歌――千蔭歌も視野に入れて――
第八章 近世類題和歌集の画賛――『類題鰒玉集』『類題和歌鴨川集』の場合――
第二部 資料編
翻刻凡例
本居大平『画賛歌』(東京大学国文学研究室所蔵本居文庫蔵)
香川景樹『東塢画讃集』(宮内庁書陵部蔵)
結語/初出一覧/後記/索引(人名・書名)
内容説明
【序より】
本書は、近世、特に後期に盛んに詠まれることになった「和歌画賛」という和歌の一形態について考察するものである。
和歌において、「絵を詠む」ということが盛んに行われた時期は二つある。一つは、九世紀末から十一世紀半ばまでの約百五十年間に流行した屏風歌であり、もう一つは本書の対象である近世の和歌画賛である。
屏風歌の盛行が貴族、特に藤原氏の台頭という歴史的な事実と結び付いているように、和歌画賛も文化の成熟や庶民の生活・教養のレベルの向上など、歴史や文化史と結び付いている。そのことから、本書でも和歌の内容だけではなく、詠まれた場や背景についても周辺資料から考察することを試みた。
和歌画賛を考える上での問題意識として、「一、なぜ近世期に盛んに詠まれるようになったのか」「二、どのような場で詠まれていたのか」「三、和歌画賛の独自性とはどこにあるのか」を設定した。そして最終的には、「四、なぜ絵に和歌を添えるのか」ということについても考えてみたい。
貴族だけのものであった屏風歌と違い、ある程度の文化的教養を身につけている者なら、誰もが詠むことも享受することもできた和歌画賛が果たした役割とは何だったのかということについても、本書を通して考察していきたい。