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平安鎌倉時代における日本漢音の研究

全二巻(研究篇・資料篇)

平安鎌倉時代における日本漢音の研究
著者 佐々木勇
ジャンル 国語学(言語学) > 語彙音韻
出版年月日 2009/02/05
ISBN 9784762935671
判型・ページ数 A5・1758ページ
定価 49,500円(本体45,000円+税)
在庫 在庫あり
 

内容説明

【序文より】佐々木勇博士の『平安鎌倉時代における日本漢音の研究』は、日本に伝来した漢字音の諸体系のうち、呉音・唐音・宋音等に対する漢音を対象として、現存する平安時代と鎌倉時代の訓点資料及び古字書・音義等を主資料に据えて、その諸資料間の位相差と時の推移に伴う変遷の両面から、日本漢音の実態について分析し論述したものである。漢音は呉音に比べて伝来が比較的に新しいために伝来当時に近い資料に基づいて、日本で行われた漢音がそれに忠実な発音であるか否かを知ることが出来る。本書は、本邦に伝存する平安・鎌倉時代の漢音資料を広く視野に入れて、主要資料を全国に博捜して新資料を加え、その字音注を蒐集し整理し分析し、特に同じ時期に仮名と声点とが共に加点された漢音資料を重視して、各種の資料間の共通点と共に相違点に着目して日本語音化の度合いを説いている。(小林芳規)

【緒言より】本研究は、現代日本語に大きな位置を占める漢字音について、漢音を対象として、平安鎌倉時代における諸相を描こうとしたものである。日本語話者が漢字と接して以来、その音の学習は、途絶えることがなかった。中国語として漢字音を用いる時は、使用者の中国語学習の度合いによって、その音が中国語原音に近いか否かが左右される。一方、日本語として漢字音を使用する時には、日本漢字音学習の度合いによって、その音が日本漢字音の規範に近いか否かが決まる。さらに、使用目的・使用の場の相違によっても、実現される漢字音は、異なっていたと考えられる。すなわち、規範的な漢字音を注記し、発音する能力のある者も、目的・場によって、日本語音化した漢字音を使用することが有った、と推定される。この点は、諸先学も推測されてきたところである。本研究の目的は、漢音について、この予想を実証することである。この目的を、残存文献を資料として達成するため、研究対象を平安鎌倉時代の漢音とした。平安鎌倉時代を対象とするのは、当時書写の資料が比較的多く現存するため、諸相の叙述が可能であろう、と考えたためである。従来の日本漢字音研究の成果は大きく、一見、それに加えるべきものはないように思われる。しかし、辞書・音義、字音直読資料から得た材料による、体系の記述がほぼ完了した現在、そのような知識音としての体系を有する日本漢字音が、日本語の中でいかに使用されたのかを探ることが、日本語の歴史を考察するために必要である。また、日本漢字音の歴史的研究を、現代日本語の研究につなげるためにも、かつての日本語内における使用実態の究明が肝要である。

【内容目次】

序 文(小林芳規)・緒 言・凡 例

研究篇

序 章

第一節 日本漢字音史に関する従来の研究と本研究の目的

    日本漢字音史に関する従来の研究/日本漢字音史研究の課題/本研究の目的

 第二節 本研究の方法

     国語史学における「位相」に関する先行研究/本研究で使用する用語「位相」の定義/本研究の方法

 第三節 本研究の資料及び構成

     本研究の資料/本研究の構成

第一部 音形(声母・韻母)論

第一章 字音直読資料における漢音形

第一節 『蒙求』平安中期点における漢音形

第二節 『蒙求』諸本における漢音形の変遷

第三節 『蒙求』鎌倉期点における漢音形

第二章 漢籍訓読資料における漢音形

 第一節 『史記』平安後期点における漢音形

 第二節 金沢文庫本『群書治要』鎌倉中期点における漢音形

 第三節 金沢文庫本『群書治要』鎌倉中期点に見られる人為的漢音形

第三章 仏書訓読資料における漢音形

 第一節 『大慈恩寺三蔵法師伝』における平安後期・院政期の漢音形

 第二節 『大慈恩寺三蔵法師伝』における鎌倉初期の漢音形

第四章 和化漢文訓読資料における漢音形

 第一節 和化漢文訓読資料における平安後期・院政初期の漢音形

 第二節 和化漢文訓読資料における院政末期・鎌倉初期の漢音形

 第三節 久遠寺蔵『本朝文粋』鎌倉中期点の漢音形

          久遠寺蔵『本朝文粋』鎌倉中期点の漢音体系

     金沢文庫本『群書治要』との比較を通して見る久遠寺蔵『本朝文粋』の漢音形

第五章 音義・字書における漢音形

 第一節 醍醐寺蔵『妙法蓮華経釈文』平安後期点の漢音形

 第二節 唐招提寺蔵『孔雀経音義』院政初期点の漢音形

      唐招提寺蔵『孔雀経音義』における反切の選択

      唐招提寺蔵『孔雀経音義』の仮名音注から知られる漢音形

 第三節 図書寮本『類聚名義抄』院政期点の漢音形

 第四節 音義・字書における鎌倉初期の漢音形

 第五節 音義・字書における反切・同音字注への仮名音注加点

第六章 辞書における漢音形

 第一節 辞書における院政期の漢音形

 第二節 辞書における鎌倉初期の漢音形

第二部 声調論

第一章 字音直読資料における漢音声調

 第一節 『蒙求』平安中期点の声調体系

 第二節 『蒙求』における声調の伝承と衰退

 第三節 『蒙求』鎌倉期点における声調変化

第二章 漢籍訓読資料における漢音声調

 第一節 『史記』平安後期点における漢音声調

 第二節 金沢文庫本『群書治要』鎌倉中期点における漢音声調

 第三節 金沢文庫本『群書治要』鎌倉中期点における軽声

 第四節 漢籍訓読資料における軽声の消滅

 第五節 漢籍訓読資料における軽声消滅後の漢音声調

第三章 仏書訓読資料における漢音声調

 第一節 仏書訓読資料における平安後期・院政期の漢音声調

 第二節 仏書訓読資料における鎌倉初期の漢音声調

 第三節 『大慈恩寺三蔵法師伝』における声調の伝承と衰退

第四章 和化漢文訓読資料における漢音声調

 第一節 和化漢文訓読資料における平安後期・院政初期の漢音声調

 第二節 和化漢文訓読資料における院政末期・鎌倉初期の漢音声調

 第三節 久遠寺蔵『本朝文粋』鎌倉中期点の漢音声調

第五章 音義・字書における漢音声調

 第一節 醍醐寺蔵『妙法蓮華経釈文』平安後期点の漢音声調

 第二節 唐招提寺蔵『孔雀経音義』院政初期点の漢音声調

 第三節 図書寮本『類聚名義抄』院政期点の漢音声調

 第四節 音義・字書における鎌倉初期の漢音声調

 第五節 音義・字書における反切・同音字注への声点加点

第六章 辞書における漢音声調

 第一節 辞書における院政期の漢音声調

 第二節 辞書における鎌倉初期の漢音声調

第三部 位相差各論

 第一章 本研究における第三部の位置づけと各章の関連

 第二章 止摂合口字音の受容に見られる位相差

 第三章 「方」の日本漢字音ホウの受容に見られる位相差

 第四章 全濁声母字の濁音形出現に見られる位相差

 第五章 鎌倉時代における舌内入声音の実現に見られる位相差

 第六章 鎌倉時代における漢音声調に見られる位相差

 第七章 濁声点の加点率に見られる位相差

 第八章 一個人の声点加点に見られる位相差―清原宣賢の場合―

 

資料篇 

 「分紐分韻表」:本表は、日本漢字音の代表的資料である下記四点の、標題漢字の

  うち、字音注の見られる漢字を『切韻』(『廣韻』)『韻鏡』の体系に基づいて排列し、

  その音注を記したものである。

『蒙求』十本 分紐分韻表

  金沢文庫本『群書治要』経部 鎌倉中期点 分紐分韻表

『大慈恩寺三蔵法師伝』鎌倉初期点 分紐分韻表

久遠寺蔵『本朝文粋』鎌倉中期点 分紐分韻表

索 引(研究篇索引・資料篇漢字索引)

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