目次
第一部 曙光の時代
第一章 中国現代詩史(一九一七年~四九年)概略
第二章 世紀末の毒――馮至の「蛇」をめぐって――
第三章 郭沫若『女神』の一面
第四章 象徴詩のもう一つの源流――馮乃超の詩語「蒼白」をめぐって――
第二部 建国後十七年の詩壇
第一章 三つの「大雁塔」詩――政治の時代から経済の時代へ向かう中国詩――
第二章 建国後の中国詩壇――詩人であること、あるいは詩の生まれる条件――
第三章 翼の折れた鳥――第一次『詩刊』の八年――
第四章 流沙河「草木篇」批判始末
第三部 地上と地下・あるいは公然と非公然――文革期の現代詩――
第一章 文革期の非公然文学――郭路生(食指)の詩――
第二章 文革期文学の一面――高紅十と『理想の歌』を中心に――
第四部 文革後・いわゆる新時期の現代詩
第一章 朦朧詩――その誕生と挫折――
第二章 朦朧詩以後の中国現代詩――〈第三代詩人〉について――
第三章 「帰来」という主題――八〇年代中国詩の一面――
第四章 「新生代」詩人・韓東の大衆像
第五章 旧世代詩人の新生――四川の詩人・梁上泉の詩をめぐって――
第六章 香港現代詩の一面――王良和とそのザボン連作について――
後書き/索 引
内容説明
【後書き】より
本書に収めたものは、基本的に中国現代詩史を主題とするか、多少でも詩史的な視点をもつ文章である。
主題となっている時代に応じ、現代(民国時代)、建国後、文革期、文革後と四時期に分け、それぞれを一部とした。ただ、いずれも通史を意図して書いたものではなく、いろいろな事情と、その時どきの興味、関心に応じて書いた独立の文章である。そのために首尾一貫性に欠け、内容の重複も少なくないことをお許しいただきたい。
本書で特に力を入れて書いたのは「序章」と、文革期の詩、および「朦朧詩」の章である。ついでに言えば、自分で気に入っているのは、第一部では馮至の「蛇」を論じた文、馮乃超の詩語「蒼白」について書いたもの。第二部では、流沙河の批判の経緯を調べた文章、第三部の二編。郭路生の話は、もとの文章の抜粋であるが、私の文革期文学論でもある。第四部では、いま言った第一章の朦朧詩と第三章の「帰来」詩人の話である。第二章の〈第三代詩人〉は、資料の紹介だが、資料的にはまだ役に立つと思い収録した。「序章」は、題名こそ「中国現代詩史を貫くもの」としたが、内容はプロレタリア詩に偏っていて新月派や九葉派など非プロレタリア詩への目配りが欠けている。だが私はこうした詩派の詩にも〈暗黒/光明〉モデルは影響を与えていると考えている。