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古都洛陽と唐宋文人

古都洛陽と唐宋文人

環境は人々にどのような影響を与えるのか―洛陽に生きた白居易・司馬光など唐宋文人の詩文と陪都「洛陽」との関係に迫る!

著者 中尾 健一郎
ジャンル 中国古典(文学)
中国古典(文学) > 唐宋元
出版年月日 2012/10/29
ISBN 9784762929879
判型・ページ数 A5・400ページ
定価 11,000円(本体10,000円+税)
在庫 在庫あり
 

目次

前 言
序章 唐代以前の知識人と洛陽
第一節 後漢の知識人――張衡
第二節 魏の知識人〔曹植・阮籍〕
第三節 西晋の知識人――潘岳
【第一部 唐代篇】
第一章 孟郊と洛陽
第一節 古都洛陽の陰翳
第二節 孟郊の洛陽体験
第三節 洛陽における陶淵明詩の受容
第四節 「洛風」と「狂」の意識
第二章 白居易と長安新昌里邸
第一節 新昌里の立地条件
第二節 新昌里の隣人たち
第三節 洛陽退居の理由


第三章 白居易と洛陽
第一節 洛陽に帰ってきた白居易
第二節 青年時代の白居易と洛陽
第三節 江州左遷時代の白居易と洛陽
第四節 白居易の洛陽退居と子弟教育
第四章 白居易の孤独とトポフィリア
第一節 白居易の孤独と琴詩酒
第二節 白詩における「竹林七賢」――阮籍・嵆康・劉伶
第三節 知音としての魏晋の士人
第四節 長安の動向と白居易の心情
第五節 白居易のトポフィリア――詩文によって構築される洛陽のイメージ
第五章 洛陽の壊滅と復興――李庾の「東都賦」を中心に
第一節 安史の乱から貞元年間までの洛陽
第二節 李庾の「東都賦」(一)――作者と製作年代
第三節 李庾の「東都賦」(二)――洛陽の描写
第六章 唐末動乱期の洛陽と韋荘
第一節 黄巣の乱勃発時の韋荘
第二節 洛陽における韋荘
第三節 長安への帰還
【第二部 北宋篇】
第七章 北宋の洛陽士大夫と唐代の遺構
第一節 唐末五代の洛陽
第二節 唐人を偲ぶ洛陽の士大夫たち〔梅堯臣・司馬光〕
第三節 朱敦儒の追憶
第八章 司馬光と欧陽脩
第一節 司馬光と欧陽脩の交流
第二節 司馬光に見える欧陽脩の影響〔「酔翁」と「迂叟」・文人趣味〕
第三節 司馬光と欧陽脩における「清風明月」
第九章 司馬光の洛陽退居生活とその文学活動
第一節 司馬光の洛陽退居と「独楽園記」
第二節 洛陽における司馬光の詩作活動
第三節 北宋における司馬光の「独楽」の意義
第十章 司馬光の詞作
第一節 司馬光の艶詞
第二節 司馬光の雅詞
第三節 河橋参会
第四節 洛陽における詩詞の唱和
第十一章 北宋の耆老会
第一節 杜衍の五老会
第二節 江南における耆老会
第三節 欧陽脩の耆老会
第四節 熙寧・元豊年間の洛陽における耆老会と司馬光
終 章
初出一覧・あとがき・索引(人名・地名)

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内容説明

 

隠遁者に対する共感・憧憬、陪都に住むゆえの失望・諦観・羨望、朝政や為政者に対する嫌悪・反発・批判、洛陽に住まう文人が綴る詩文には、首都で作られた詩文をはるかに凌ぐ豊かさと陰翳が見られる。白居易と司馬光を中心に洛陽で活動した知識人を取りあげ、彼らと洛陽の関わり、洛陽における文学活動の実態に迫る。

【前言より】

人間を形作るのは環境であるという。しかしその環境は必ずしも一定不変のものではなく、ある時は自らの意思によって、またある時は抗いようのない運命の力によって変えられていく。古来、中国の知識人たちは自らの生とそれをとり囲むさまざまな環境―それは場合によっては地理的環境や自然環境であり、また場合によっては政治・文化・社会的環境である―とその変化を多く詩文に綴った。そして当然のことながら、彼らの生き様もこれらの環境によって大きく左右されていた。したがって各時代・各地域のさまざまな環境とその背景にある歴史事件が知識人を育み、文学作品を生み出したと言っても過言ではない。中国有数の古都洛陽は、後世に影響を及ぼした数多の文人士大夫を輩出した都市である。文人たちの集会と文人集団の成立など、これを抜きにしては洛陽を語ることのできない文化的事象が多く、特に唐宋時代を通じて見れば、他の長安や南京といった古都とは同列に論じることのできないほどその文化的気風は顕著であった。かりに洛陽にゆかりのある唐宋時代の知識人を挙げれば、杜甫、韓愈、孟郊、白居易、劉禹錫、司馬光、邵雍、張載、程顥、程頤、朱敦儒など、中国の文学史・思想史上の著名な人物が多く名を列ねる。彼らが歴史の表舞台に登場し、後世に名を遺したのは、決して単なる偶然ではない。「洛陽」という環境がこれらの知識人を育んだと言うべきである。本書において古都洛陽と唐宋文人の関わりについて論じる所以である。本書に取りあげる唐宋の文人士大夫は、大部分が首都での生活を経験し、かつ首都に次ぐ大都市、いわゆる古都であり陪都である洛陽での生活を経験する。そうすると彼らの目には、皇帝の行幸が途絶えた陪都洛陽は一体どのように映ったのであろうか、また洛陽は彼らの創作活動にいかなる影響を及ぼしたのであろうか。本書は、筆者のこうした問題意識の下に、唐宋時代の知識人たちの洛陽における活動とその活動の背景について明らかにすることを目的とする。特に中唐から北宋にかけて、洛陽の風雅なイメージの形成と発展に大きく寄与した白居易(七七二~八四六)と司馬光(一〇一九~一〇八六)を中心に据えて、洛陽に居住した知識人と彼らによる文学の営みが、洛陽という古都とどのように関わったのかということについて論ずるものである。

 

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