目次
図書ということば/図書と他の文献との違い/文書/記録/図書/絵画・書/地図・暦/
広告/看板/金石/拓本/法帖/楽譜/写真・複写/新聞/雑誌/図書の定義/
国定教科書は果たして図書か/書誌学・図書学・図書館学/漢籍本文の大約
二、校べ勘える―校勘学と形態書誌学
校勘学/形態書誌学/写本と刊本/写本の場合/刊本の場合/刊・印・修/
覆刻の見分け方
三、図書の形態と機能
形と内容の相関/献上本/料理物語/好色一代男/形も求版される/
形態の変遷(装訂法)/巻子本/折本/旋風装/龍鱗装/粘葉装/蝴(胡)蝶装/
包背装/綴葉装/線装/大和綴/紙訂装/畳物/図書の数え方/装訂の変遷
四、図書の表記
文字/漢字とカナとかな/筆写文字と印刷文字
五、図書(印刷)の歴史
時代区分/図書の歴史/印刷の歴史/印刷の起源/非営利と営利/日本印刷の歴史/
和様・唐様/写経体和風の印刷/百万塔陀羅尼/摺供養/
我国刊経に与えた宋版大蔵経の刺激/寺院の出版/摺仏/興福寺(法相宗)の出版/
南都の寺院による出版/西大寺(律宗)/東大寺(華厳宗・三論宗)/法隆寺/度縁牒/
金剛峯寺(真言宗)/根来寺(真言宗)/延暦寺(天台宗)/醍醐寺/
教王護国寺(東寺・真言宗)/石清水八幡宮/浄土教典の出版/知恩院(浄土宗)/
泉涌寺(律宗・真言宗)/長楽寺(天台宗・臨済宗)/唐様 禅寺の出版/
夢窓疏石と春屋妙葩/地方での出版/室町時代の様々な出版/御成敗式目/
仮名交り本/絵入本/尊氏願経/師直版/装飾経/切支丹版/古活字版/
古活字版の作り方/活字版と整版との見分け方/古活字版から整版へ/
学問のすゝめの場合/唐山の活字/朝鮮の活字印刷/江戸の出版/坊刻本・町版/
蔵版本/江戸期出版の特徴/藝能的要素/整版本のできるまで/套印本/
套印本とは何か/套印の始まり/双印本・一套・朱墨本/板・拱花/
唐山の色刷方/唐山の見当/套印本のバックグラウンド/営利書肆の出来/
閔斉・凌蒙初/唐山の刻工/私刻と坊刻/一座の製作/藝能としての東錦絵/
地下出版・春画/浮世絵・都市の生活/錦絵版画前史/近世の出版界/
覆刻/刊・印・修/同版色変り/複製性/生態系としての絵画/見当の発生/
見当の周辺/西陣の紋紙/整版から近代活字へ/紙型
六、図書の調べ方
閲覧の心得/閲覧まで/閲覧日/閲覧時/筆記用具/閲覧後
図書各部の名称/図書の調べ方/ノートをとる/一、表紙/二、見返 /三、前付/
四、本文巻頭/五、書式・版式/六、尾題/七、後付/八、刊記/九、注記/
まとめ/恣意的印刷年表
図版篇(解説と図版訳250点収録)
覆刻/刷付外題/ 類似/妄補/正版/修/蔵版印/無許可版/墨格/銅版/改題/
後印/活字本/校正刷/魁星像/自訂本/本の擬態/本の形と文体/
一代男の上方版と江戸版/和本と唐本/書入本/題簽の位置と文頭/題簽/封面/
刊記/板木支配/弘通書肆/濯板/洗版/見返と奥付の書肆の位置/蒙御免/御免/
竣工日数/各様の書物/地方板
コラム
凸版凹版平版―印刷三法/摺刷方/四庫分類/生活分類/版本式の写経/
巻刷り/物の本と草紙(地本)/流行―ジャンルを追う/合羽刷/
文政七年二月補刻の奥付
索 引・あとがき
内容説明
【第7回 ゲスナー賞 「本の本」部門 銀賞受賞】
◆林 望氏 推薦文 「まさに我が意を得たり」 より
この書を撰(つく)り著せる大沼晴暉さんは、現今随一の書誌学者であることは言を俟たぬけれど、実は、それ以前にまた民具研究、とりわけ漁具漁法研究界に於ける耆宿でもある。と同時に、伝統の話芸、就中に古典落語に関しては生き字引と言って過言でない人である。本書劈頭に、まずもって「図書とは何か」という命題を掲げて、これを詳密に分析論断するところを読めば、この著者が、決してそこらの学者先生とは同じからぬ魂の持ち主であることを知るであろう。曰く、「・・・図書の場合、写本或いは刊本という複製を作り、それで読者を増やしてゆくという方法がとられた。複製全てが云わばニセモノであるという前提に立つのが書誌学の立場だと私は思っている。それだけにそのニセモノがどういうニセモノなのかを、今流行のことばで云えばアイデンティファイするのが書誌学である」と。これほど簡勁明晰に「図書そして書誌学とは何か」ということを言い表した文章を私は他に知らない。かくて、とかく「読み物」としては敬遠されがちな、図書学の概論書としては、異例の面白さと、無類の具体性と詳密さを兼ね備えた、まことに珍しい、図書学概論書の金字塔というべき名著である。