目次
第一章 清華簡『楚居』初探 ………………………………… 浅野裕一
第二章 上博楚簡『王居』の復原と解釈 …………………… 浅野裕一
第三章 史書としての清華簡『繋年』の性格 ……………… 浅野裕一
第四章 『大学』の著作意図――「大学之道」再考―― …… 浅野裕一
第五章 孔子の弁明――帛書易伝「要」篇の意図―― …… 浅野裕一
第六章 五十歳の孔子――「知天命」と「格物致知」――…… 浅野裕一
第七章 論『論語』 …………………………………………… 浅野裕一
第八章 清華簡『尚書』文体考 ……………………………… 小沢賢二
第九章 中国古代における文書の成立と『尚書』の位置 …… 小沢賢二
第十章 中国古代における編年史料の系譜 ………………… 小沢賢二
第十一章 カールグレン『左傳眞僞考』への軌跡 …………… 小沢賢二
内容説明
【まえがき】より(抜粋)
中国では一九七〇年代になると、一九七二年に山東省銀雀山の前漢墓から漢簡が、一九七三年に湖南省長沙の馬王堆前漢墓から帛書が、一九七五年に湖北省雲夢県睡虎地から秦簡が、相次いで発見される。
その後二十年近くの時が経って一九九〇年代に入ると、一九九三年に湖北省荊門市郭店の楚墓から戦国楚簡が発見され、翌一九九四年には上海博物館が香港の骨董市場から、湖北省内で出土したと見られる大量の戦国楚簡を購入する。さらに二十一世紀に入ると、二〇〇八年に清華大学が香港の骨董市場から大量の戦国竹簡を入手したのを始め、その後も岳麓書院秦簡や北京大学秦簡・北京大学漢簡などが続々と現れてきている。
法律関係の文書が中心の雲夢秦簡を除き、銀雀山漢簡・馬王堆帛書・郭店楚簡・上博楚簡などは、いずれも思想関係の文献が大半を占めている。これに対して新出の清華簡は少しく趣を異にする。清華簡は残簡を含めて二三八八枚、炭素14の年代測定値は前三〇五年±三〇であるが、その中には歴代の楚都の所在地を記す『楚居』や、『繋年』と命名された二十三章から成る史書、『国語』に近似した史書などの古代の史書が含まれている。また清華簡には、真正古文尚書とも称すべき『尚書』類や、『逸周書』の類も存在している。
そこで筆者は友人の小沢賢二氏とともに、これを機会に出土簡帛を用いて、古代史書や儒家経典について再考を加えてみようと思い立った。小沢氏は天文・暦法・音韻学・書誌学・古文書学など多彩な視点から、筆者はもっぱら思想史の視点から、出土文献が古史や儒家経典に対し、どのような新知見をもたらすのかを考察してみた。本書にはこうしてこの一年の間に書き綴った論考を収録している。
二人の論説には例によってかなりの冒険的要素が含まれているので、とても付いては行けないと違和感を覚える方々も多いと予想される。我々には、批判や非難を嫌って自らの無誤謬性を主張したりする気は毛頭ない。出来得れば多くのご批判を頂いて、自分たちの誤りを正して行ければと望んでいる。本書が筆者と小沢氏の共著だからといって、細部まで意見を一致させるよう調整を図ったりはしていない。基本的事柄については可能な限り認識を共有するよう努めはしたが、見解の一致を見ない所は、敢えてそのままに残す方針を取った。