目次
日本語版に寄せて・自序:研究の歩み
第1章 緒 論
第2章 経営系統:特殊な辺地のメカニズム
第1節 府庁の東部経済政策の執行機関 第2節 辺地ランクの組織構成
第3節 政府の色彩濃厚な人員構成
第3章 土地の開墾と栽培事業:国家と企業の共同構築下の農林開発
第1節 東部の台拓熱帯栽培事業センター 第2節 荒野地優先の開墾事業
第3節 栽培と造林事業の戦略的価値の高まり 第4節 農業の転換と限界土地の開発
第4章 移民事業:軍需産業と移民政策の転換
第1節 東台湾の内地化から軍需産業の開発 第2節 本島人移民事業の経営
第3節 移民政策転換後の本島人移民の趨勢
第5章 投資事業:資本主義化と工業化の推進
第1節 台拓の投資事業と東部の投資構造 第2節 台東庁の熱帯拓殖企業の勃興
第3節 花蓮港庁の軍需鉱工業企業の発展 第4節 軍需企業と地域の発展
第6章 結 論
付 録
付録1 台拓の東台湾事業の職員の任免 付録2 台拓の東台湾の事業地
付録3 台東出張所職員の経歴 付録4 花蓮港出張所職員の経歴
付録5 台拓島内の栽培と造林作物成果の変遷 付録6 東台湾各事業地の栽培項目と数量
付録7 台拓の東部熱帯栽培作物の用途と理由
付録8 台拓による東台湾会社投資の重要理事・監事
参考文献・訳者あとがき・人名地名索引・事項索引
内容説明
本書は、1937~45年の国策会社である台湾拓殖株式会社(以下、台拓)の、東台湾の経営メカニズム、農林事業、移民事業および投資事業を分析したものである。台湾総督府は戦時国防資源の需要のために、如何にして台拓を通じて、植民地辺地に位置する東台湾の積極的な開発を実施し、それによって、新興軍需産業が形成されるに至ったかを解明したものである。台拓の東台湾での投資は、東台湾が日本帝国の全体の戦略的配置の中で一席の地位を占め、東台湾の熱帯栽培での経験をさらに進んで華南、南洋に技術を複写・移転し、熱帯地域の台湾が日本帝国での位置の特殊性を反映していた。他方、国策会社・台拓の東部の経営は、軍国主義日本の経済の統制化、計画化および工業化に合わせて、戦争と植民地辺地の資本主義化、経済の近代化との連結過程をあらわしたことである。戦時東部の産業開発では「植民地の飛び地経済」と「植民地の遺産」の両面性を持っていた。