目次
朱子学と『朱子家礼』――理学のための礼学 …………………………………… 崔 真徳(篠原啓方 訳)
家族、儀礼、善政――朱熹礼学の形成過程 ………………………………………… 宋 在倫(吾妻重二 訳)
『朱子家礼』における人間と社会
――新たな宗法理解と再構成に見られる古礼的脈絡の考察 ……… 朴 礼慶(篠原啓方・吾妻重二 訳)
第二部 『家礼』の伝播と変容
中国明清時代における『朱子家礼』の普及と定着 ………………………………… 楊 志剛(井澤耕一 訳)
『朱子家礼』の受容と普及――東伝版本の問題を中心に ………………………… 張 東宇(篠原啓方 訳)
日本における『家礼』の受容――林鵞峰『泣血余滴』『祭奠私儀』を中心に ………………… 吾妻重二
琉球における『朱子家礼』の受容と普及過程――『四本堂家礼』の性格 ……………………… 三浦國雄
ベトナムにおける家礼の受容と改変――祝文を中心に …………………………………………… 嶋尾 稔
第三部 東アジアにおける『家礼』の様相
Ⅰ中国における『家礼』文化の諸相
南宋期における『周礼』学について――朱熹の『周礼』解釈を中心に ……………………… 井澤耕一
明末・河南新安における『朱子家礼』の現場――呂維祺の冠礼を中心に …………………… 白井 順
朱熹の『家礼』における飲食物 ………………………………… パトリシア・イーブリー(吾妻重二 訳)
Ⅱ日本における『家礼』文化の諸相
後期水戸学の喪祭礼 ………………………………………………………………………………… 澤井啓一
浅見絧斎と『朱子家礼』…………………………………………………………………………… 田 世民
朱子『家礼』と懐徳堂『喪祭私説』……………………………………………………………… 湯浅邦弘
Ⅲ韓国における『家礼』文化の諸相
嶺南学派における『朱子家礼』の受容――東厳 柳長源の『常変通攷』を中心として
…………………………………………………………………………… 権 鎮浩(吾妻重二 訳)
畿湖学派における『朱子家礼』の受容 ………………………………………… 都 民宰(吾妻重二 訳)
十七、十八世紀の朝鮮使節が観察した中国の儀礼 …………………………… 何 淑宜(吾妻重二 訳)
内容説明
二〇〇九年十一月三日・四日の二日間、韓国慶尚北道安東市の韓国国学振興院において、韓国国学振興院および関西大学グローバルCOE「文化交渉学教育研究拠点」(ICIS)共催の国際シンポジウム「朱子家礼と東アジアの文化交渉」が開かれた。本書はそのシンポジウムの論文集である。
シンポジウムが朱熹の『家礼』と「東アジア」を銘打ったのにはわけがある。南宋の朱熹(一一三〇~一二〇〇)が著わした『家礼』は朱子学の広範な伝播とあいまって、中国のみならず、朝鮮、ベトナム、琉球、日本などの東アジア地域にさまざまな影響をもたらしたからである。『家礼』とは冠婚喪祭(冠婚葬祭)を行なうための手引書であり、近世以降、この地域において日常の通過儀礼や死者儀礼のための重要なマニュアルと目されてきた。しかし、これまで儀礼研究が立ち遅れていたこともあって、その具体的な様相は必ずしも明らかになっていなかった。そこで本学と研究協力協定を結んでいる韓国国学振興院とはかり、広い視野から『家礼』をとりあげるシンポジウムを企画、開催したのである。