目次
第一章 引拠各本文選李善注優劣攷
第二章 文選李善注文義例攷
第二篇 文選李善注所引尚書條攷 例言・巻第一~巻三十一・巻第三十四~巻六十
第三篇 李善本尚書総攷
第一章 総説
第二章 李善本尚書と今本尚書
第三章 李善本尚書と尚書定本
第四章 李善本尚書と正義本尚書
第一節 五経正義の撰定
第二節 正義本尚書と尚書定本
第三節 正義本尚書と今本尚書
第四節 李善本尚書と正義本尚書
第五章 李善本尚書と現存隷古定尚書
第六章 結論
著者補訂・解 説・斯波六郎博士略歴・著述目録
内容説明
【解説】より(抜粋)
「文選李善注所引尚書攷證」は、昭和十七年八月二十五日に油印にて刊行されたもので、上下二冊に分かれていた。当時発行部数少なく、特別の関係の人でなければ、これを見ることはできなかった。
本書は、全体を三篇に分かち、第一篇は「文選李善注引文義例攷」、第二篇は「文選李善注所引尚書條攷」第三篇は「李善本尚書総攷」である。第一篇の第一章「引拠各本文選李善注優劣攷」では、当時知り得た「文選」各本について、「文選」の旧を残すか否かについて、詳しく検討を加えている。第二篇「文選李善注所引尚書條攷」は、先生の最も力を注いで、最も苦心されたところであろう。第一篇で、「文選」諸本の長短優劣を明かにし、現今通行している胡刻本が比較的優れていることを確認した上で、李注引文の義例を明かにし、かくて中心の「李善注所引尚書攷」の論攷に入るわけである。かくて先ず「胡克家重彫宋淳煕刊本」を底本とし、引く所の尚書経文を摘出して「南昌府学刻本尚書」と校讐して、李善注引く「尚書」と今本との異る点を明かにしようとした。李善注所引の「尚書」の系統を明かにしようとしたのが、第三篇「李善本尚書総攷」である。第三篇によると、「尚書」を引きつつ、「馬融注」を連引したもの一回、「鄭玄注」を連引したもの四回、「王肅注」を連引したもの二回、「孔伝」、「馬注」、「鄭注」を並挙したもの一回であり、「孔安国伝」を連引したものは、実に一百七十三回の多きに達するという。これらを綜合して勘案の結果、李善所引の「尚書」は偽古文の「孔氏伝本」であると断ぜられている。しかも隋唐時伝わる「孔氏伝本」のうち、李善の拠る所は、齊の姚方興が、舜典を以て東晉の書を補った本であると確定され、更にそれは「孔穎達尚書正義」の拠る所の本と同一であると明言されている。
本書は、著者手訂本の影印である。著者補訂は殆ど全頁にわたって書き入れ、抹消・貼りこみ訂正がなされている。本書制作にあたり手訂本をそのまま復原することにつとめたが、書き入れや貼りこみ訂正が他の行の上に及んでいる場合があり、止むを得ずこの部分のみ巻末に「著者補訂」として翻字掲出した。