目次
総 論
文学篇 六朝文学に於ける『山海経』の受容について――郭璞と江淹の場合
1、『山海経』とは――その概略
2、『山海経』の諸注釈――郭璞注から明清の諸注へ〔六朝東晋の郭璞注/郭璞注以降〕
3、近代的『山海経』研究の流れ――成立地・編纂年代研究から受容研究まで
4、『山海経』受容史に於ける六朝文学について〔郭璞と陶淵明に於ける『山海経』の受容/六朝に於ける
『山海経』注釈と補欠/郭璞と江淹に於ける『山海経』の受容〕
図像篇 漢魏六朝に於ける「瑞祥」と政治・文化 ――異形の博物誌『山海経』の受容とその周辺
文学篇 六朝文学に於ける『山海経』の受容について――郭璞と江淹の場合
第Ⅰ部 郭璞文学に於ける『山海経』の受容について
第一章 郭璞の文学・思想および日中の郭璞研究
1、郭璞の略歴・著作・歴代評
2、郭璞『山海経』注の特徴〔郭璞『山海経』注/汲冢書・国史編纂との関わり〕
3、郭璞研究と問題点〔中国に於ける郭璞研究/日本に於ける郭璞研究〕
4、郭璞文学に対する評価〔郭璞文学に於ける『山海経』受容/郭璞の「遊仙詩」評/郭璞文学に於ける思想〕
第二章 崑崙と水――郭璞『山海経図讃』「崑崙丘」に見る水の宇宙
1、問題の所在
2、郭璞『山海経図讃』「崑崙丘」の検討〔「惟帝下都、西羌之宇」/「■然中峙、号曰天柱」/「崑崙月精、
水之霊府」〕
3、郭璞文学に見る「水」の世界〔「潜通」「潤下」する水/「地脈」と「洞庭」/郭璞と風水/ 浮天載地〕
4、小 結
第Ⅱ部 江淹文学に於ける『山海経』の受容について――郭璞との関わりを中心に
第一章 江淹の文学・思想および日中の江淹研究
1、江淹の略歴・著作・歴代評
2、江淹研究と問題点〔中国に於ける江淹研究/日本に於ける江淹研究/六朝本草・道教研究における江淹評/江
淹に於ける『山海経』受容〕
第二章 江淹「五色の筆」新考――『山海経』と郭璞の系譜から
1、問題の所在 2、『山海経』的色彩感とは 3、郭璞「遊仙詩」
4、江淹の鉱物愛好 5、江淹「赤虹賦」 6、小 結
【附表Ⅰ・Ⅱ、『山海経』・郭璞・江淹 色彩語一覧表】
第三章 江淹『赤県経』小考――「赤県」の語と呉興左遷時代
1、問題の所在 2、「赤県」とは 3、『赤県経』 4、小 結
第四章 江淹「遂古篇」について――郭璞『山海経』注との関わりを中心に
1、問題の所在 2、江淹「遂古篇」の検討〔先行研究とその問題点/本文検討〕
3、郭璞注の闕〔江淹「遂古篇」にみる仏教的世界観(1)・(2)/江淹に於ける『山海経』〕
4、小 結 【附表Ⅰ~Ⅳ、『山海経』本文・郭璞注・江淹「遂古篇」・史書 対照一覧表】
第五章 江淹「瑤草」考――郭璞「■草」の継承と展開
1、問題の所在 2、東方朔に於ける「瑤草」
3、郭璞に於ける「■草」〔郭璞『山海経図讃』および『山海経』注釈/「君子これ佩せば、人これを服し媚す」/
郭璞の『山海経』受容にみる儒家的観念〕
4、江淹に於ける「瑤草」〔江淹「別賦」/江淹「丹砂可学賦」/永遠なる「瑤草」〕
5、小 結
図像篇 漢魏六朝に於ける「瑞祥」と政治・文化 ――異形の博物誌『山海経』の受容とその周辺
第一章 中国南陽の漢代画像石にみる独角獣について ――『山海経』にみる異獣「兕」のゆくえ
1、先行研究の整理と問題点
2、先秦の文献にみる「兕」〔「角」と「革」/楚文化圏と「兕」のイメージ/「兕=一角(独角)獣」のイメージ〕
3、南陽の漢代画像石墓の独角獣の名称と機能〔南陽の独角獣と楚文化圏/「獬豸」か「兕」か〕
4、「兕」の瑞獣化〔六朝以降の「兕」の変容/「麒麟」と「獬豸」「兕」〕
5、『山海経』の独角獣「兕」のゆくえ〔「獬豸」と「兕」の混交化/郭璞『山海経図讃』の瑞獣「兕」/一角
(独角)獣「兕」の瑞獣化/漢代の画像石にみる『山海経』の受容〕
6、結 語 【図版資料】
第二章 「鳳凰に似る四羽の凶鳥」(發明・焦明・鷫■・幽昌)の来歴について
――前田尊経閣文庫本『天地瑞祥志』引『楽斗図』を端緒に
1、前田尊経閣文庫本『天地瑞祥志』引『楽斗図』にみる「發明」「焦明」「鷫鸖」「幽昌」
2、「瑞鳥」としての「發明・焦明・鷫■・幽昌」〔後漢・許慎『説文解字』/『楽記』の緯書としての『楽斗図』〕
3、六朝史書の「五行志」に見る「五色鳥」〔『後漢書』「五行志」「羽虫之孽」に見る「五色の鳥」/「凶鳥」と
しての「發明・焦明・鷫鸖・幽昌」の成立時期/『宋書』「五行志」に見る三国呉「五鳳」改元事件/『宋書』「符
瑞志」に見る「鳳凰に似る五色の鳥」の受容〕
4、「五鳳(發明・焦明・鷫■・幽昌・鳳凰)」の図像
5、結 語 【資料Ⅰ、Ⅱ】・【図版資料】
結 論
参考文献一覧・あとがき・英文要旨・中文要旨・索引(人名・書名・重要事項)
内容説明
漢と唐という巨大な帝国に挟まれた六朝四百年は、北方異民族の脅威や王室相克の下に、いくつもの王朝が目まぐるしく興亡を繰り返した時代であった。漢帝国四百年を支えた儒教に代わって仏教や道教が興隆し、旧来の価値体系は大きな変化を余儀なくされた。「文学篇」では、この激動の六朝時代に、中国古来の神話的地理誌である『山海経』が如何に受容されたか、という視点から、六朝人の世界観・宇宙観の一端を考察する事を目的とする。採り上げるのは、『山海経』の注釈や「遊仙詩」によって知られる六朝始めの詩人・郭璞と、その郭璞と遊仙詩風の継承関係が指摘される六朝後半の詩人・江淹である。
「図像篇」では、検討の対象を、動乱の六朝四百年に先駆ける漢帝国四百年に拡張する。『山海経』が「異形」の博物を描いた図像を扱うことはよく知られる。しかし『山海経』の図像に関する研究は明代以降の図像の比較研究に留まり、六朝以前の人々が目にした古図研究については殆ど手つかずのままである。
これに対して本著では、とくに漢魏六朝の政治・文化を動かした異形の瑞祥イメージと、『山海経』の異形の神話的博物との関連性を推測しつつ、「瑞祥」と政治・文化の関係を中心に漢魏六朝に於ける神話的図像の
諸相について考察する。